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 朝目が覚めたら知らない部屋にいた。よく回らない頭で、昨日は飲み会だったのだと思い出す。一晩の行為を惜しむほど純潔ではないが、だらしのないことをしてしまったという自責感はある。私は隣を見た。隣には牛島くんが眠っていた。それはもう、お手本のような姿勢で。服には一つの乱れもない。掛け布団だって丁寧にかけられていて、このまま寝具のコマーシャルに出せそうだ。

 ふと自分を見てみると、私も衣類の乱れがないことに気付いた。クリーニングからおろしたてをそのまま着たかのように、きちんと仕立てられている。もしかして、と希望に似た何かが芽生える。

 真面目な牛島くんのことだ。寝る場所がないから仕方なく同じベッドで寝ただけで、何もしていないのではないか。私がぐるぐると考えている間に牛島くんが起きた。私がいることなど一切気にせず、堂々たる目覚めだ。

「あの……昨日牛島くんが面倒見てくれたんだよね?」

 私がそっと話しかけると、牛島くんはようやく私を認識した。驚いた様子はないので、私が勝手にベッドに潜り込んでいたわけではないようだ。

「はい。先輩は三度嘔吐しました」
「できれば忘れてほしいかな……」

 昨日は牛島くんが介抱をしてくれたらしい。後輩の世話になるとはなんとも情けない。

「それで寝かせてくれたと」

 牛島くんが頷く。この純朴さなら、していないという可能性も大いにあるのではないかという気がした。私は覚悟を決め、牛島くんを見つめる。

「その後、何かした?」
「挿入行為を」

 平然と言ってのけた牛島くんに、がくりと項垂れたくなる。いくら牛島くんが大人びているといえど、年頃の男の子なのだ。牛島くんだって性行為くらいするだろう。

「妙に綺麗だからもしかしてしてないと思ったけど……」
「しました」

 牛島くんは強調するようにそう言った。たちまち恥ずかしさに襲われ、私は両手を牛島くんの方に突き出す。

「もういいから!」

 羞恥の中で、昨晩牛島くんが丁寧に私の服を着せてくれたのだと思うと、なぜか和んでしまうのだった。