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※バッドエンド

 乾いた風が吹く秋の日だった。

「私が死んで呪霊になったら夏油が使ってよ」

 突拍子もなく、名前は言った。今まで死の危機に瀕する任務に行っていたわけではない。名前はずっと、心のどこかでぼんやりと死の可能性を考えていたのだろうと思った。

「何を言っているんだ」

 私はそう言って笑ったけれど、名前が死なない保証はなかった。名前が死んで、呪霊になって、私が操って――。果たしてそれで私の思いが成就したと言えるのだろうか。私の気持ちを知っていてこんなことを頼んでいるのだとしたら、名前は大分残酷だ。

「君は呪霊にはならない。呪術師が殺すからだよ」

 私と名前の二人きり。名前の前に、私は対峙していた。私の服には血がついていた。両親の血か、村の者の血か、わからない。

「見てほしくないんだ。君は私の綺麗な所だけ覚えていてほしい。私がこれ以上醜くなるのを、どうか見ないでくれ」

 名前は自分がこれからどうなるのかわかっているかのようだった。私には敵わないと思っているからなのか、それとも私の気持ちを受け入れてくれているからなのか。後者だと思いたいけれど、既に事切れた名前からは真実が聞けない。呪霊として一緒にいるより、これでよかったのだ。もう戻れない。その気持ちだけが、私の中に渦巻いていた。