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 サッカーを楽しむ気持ちだけでやれていたのはほんの僅かな時間で、プロともなれば他の事が関わってくる。例えばお金であったり、スポンサーとの付き合いであったり。

 玲王は打ち上げの場においてスマートフォンをいじっていた。普段場を盛り上げるタイプの玲王がそうしているのは、相棒である凪が不在であることと、既に十分盛り上がったことがあるからだろう。グラス片手に、玲王は熱心に画面をスクロールしている。

「何見てるんですか?」

 後輩の言葉に、玲王は答える。

「エゴサだよエゴサ」

 エゴサーチ、とは勿論いいものだけではない。悪口が出てくることだってあるし、自分が競走馬のように扱われることだってある。でも玲王はそれくらいで凹んだりしないし、市場からどう思われているのか知りたかった。

 大抵は玲王に対し好意的なコメントだ。特に女性から、見た目やスペックを褒められることが多い。

 口角を上げてグラスを口元に持っていこうとした時、一つの投稿に目を止めた。

「名前御影選手好きすぎ笑」

 名前、というのは確かによくある名前だ。でも、玲王が少し前に付き合っていた彼女ではないかという気がしていた。投稿しているアカウントだって、名前の友達にそんな子がいたような気がする。玲王は好きな子の交友関係までしっかり把握するタイプだ。

 決めたら行動が速いのが玲王である。玲王は立ち上がり、鞄を拾って出口へと向かった。

「今から居場所特定してくる!」

 先程まで酔っていたのはどこへ、随分としっかりした足取りだ。玲王の言葉でその場にいた女性の何割かは気を落としたが、それでも好意の目はやまない。そんな視線を背負った玲王が迎えに行くのは一体どんなかなのだろう、と先程の後輩は思った。