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 スーパーへ行った時にキャベツを買ってしまうのは、偶然ではない。

「最近よくキャベツ食べてるね」

 久方ぶりに帰ってきた乙骨君が、私の後ろに立っていた。彼がそう言うということは、私は前回乙骨君が帰ってきた時もキャベツを食べていたのだろう。

「これは……」

 決して、媚びたくてやっているわけではない。でも少しも期待していないかと言うと、やはり言葉に詰まる。

 私が困窮しているのを察したのか、隣でパンダが口を開いた。

「名前は便秘なんだろ」
「パンダ!」

 女の子として、乙骨君の前では言われたくない言葉だ。私がパンダを叱りつけると、乙骨君は穏やかに笑った。それから教務室へ報告へ行き、一緒に食事をしようと誘われたのはひと段落ついてからだった。何でも、キャベツばかり食べている私を金に困っていると思ったらしい。乙骨君は自分ばかり稼いでいることをきまり悪く思っているのだろうか。冬の街の中で、隣に乙骨君の体温を感じる。

「最近任務でみんなと会えてなかったしね」

 乙骨君は付け足すように言った。自分ばかり海外任務で、二年のみんなと会えないことを彼は気にしていたらしい。

「じゃあ二年全員でもよかったんじゃ……」

 思っていたことを、つい口走ってしまう。それでは私の期待する結果にならないとはわかりつつも、クラスメイトが好きなのは私も同じだ。

「本当だ……」

 乙骨君は今気付いたとばかりに目を丸くした。私を誘ったのは無意識であるらしい。それが何故なのかは、私も乙骨君も考えないようにしているところだ。答えに行き着いたら、多分まともに話せなくなってしまうから。

 私達は少しのぎこちなさを携え、定食屋の扉を開いた。