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 道端で凛に出くわした。凛はそっけなく視線を逸らすかと思いきや、「何してんだよ」と口を開いた。それに私が「コンビニ」と答えると、「この時間に一人で出んな」と歩き出してくれた。一緒にコンビニへ行ってくれるようだ。私は不揃いな二人分の足を眺めつつ、吐き出すように言う。

「よかった、凛が普通に話してくれて」

 気配で、凛が反応するのがわかった。私は今核心に触れようとしている。恐らくは、凛が避けようとしている場所に。

「挙動不審になるかと思った」

 私は顔を上げて笑ってみせる。一週間前、私は凛に告白した。凛はただ「悪い」と言った。それ以上言われなくても、なんとなく大体の理由はわかっていた。

 凛は鼻を鳴らし、拗ねたような声を出す。

「バカにしてるだろ。本当に俺のこと好きなのかよ」
「好きだよ?」

 間を置かずにすぐさま答えると、凛が口をつぐむのがわかった。凛は今、困っているだろう。凛の頭の中にあるのは私だけなのだと思うと、少しの優越感を抱く。

「俺は、恋愛とかするつもりはない」

 凛は独り言のように吐き出した。あの日言えなかったことだろう。

「でも、するなら名前とって思ってる」

 私の心がざわめいたのは事実だ。だが私は凛に少なからず反抗心を持っていたし、この真剣な雰囲気に根を上げていた。

「その時私がまだ好きだったらね」
「おい」

 私が茶目っぽく言うと、凛の鋭い視線が飛んでくる。ずっと自分だけを好きでいろなんて、結構なわがままだ。

「私は意外にモテるよ?」

 自分でこの話を始めたにも関わらず、私はおどけて話を切り上げた。凛は余計に考え込んだような顔をしていた。そうして私のことだけ考えていればいい、と思った。