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 チームの練習というのは、何も朝からするわけではない。昼から、時には夕方からすることもある。そういう時俺は常に一人でいたけれど、彼女ができた今、その道のりを一緒にしている。

 体育館の前で別れ、彼女に手を振る。彼女はこれから帰宅だ。練習が終わったら連絡する、とも言ってある。

 ほくほくした気持ちで出入り口に足を踏み入れると、そこには木兎がいた。まるで猛禽類か何かのように、じっと目を丸くしながら。

 昔から、興味本位の視線は好きではない。アスリートになっておいて何をと思われるかもしれないが、あれこれ詮索されるのが苦手なのだ。特に今日は、十二月の中頃だった。誰もがクリスマスを前に浮つく季節。俺もクリスマスに恋人が欲しくて、意気込んで作ったのだと思われかねない。

「ねえ、今の人さ」

 木兎が口を開く。何か言うより先に、俺は早口で説明する。

「俺は本当に好きで付き合ったんだ。この気持ちに偽りはない」

 彼女は、ずっと前から好きな人だった。クリスマスに一人は寂しいからという理由で急にこしらえた恋人ではない。本当にタイミングが、世間の浮かれ具合と重なっただけなのだ。

 木兎はさらに不思議そうな顔で首を傾げた。

「え、彼女? 大好きなんだな!」

 その一言で、木兎は別にクリスマスだから作ったのだろうと言いたかったのではないと察する。そもそも、彼女とすら思われていなかったようだ。それはそれで少し不服だ。

「宮め……」

 思い出すのは、先日同じように二人でいる所を見た宮の反応だった。

 えー、臣くん、彼女作ったん? やっぱりクリスマスだから? 臣くんもクリスマスに一人は寂しいとか思うんやー、一人の方が好きそうな顔しとるのになぁ。

 宮のせいで、恥をかいてしまった。そして、木兎は確実にこの話を広める。

「みんな聞いてー!」

 早速ロッカールームで大声を出した木兎に、俺はため息をついた。