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「付き合ってやったってもええけど」という言葉を聞いた時、私は耳を疑った。

「うそ……三年間好きでいてその告白?」

 侑を見上げれば、侑は焦ったように口をとがらせている。

「別に何でもええやろ! つーか気付いてたんならお前が告れや!」
「何で私から告らなあかんねん! 待たせに待たせてどんな告白かと思ったらこんな……」

 私は下を向く。侑が私を好きであることには、なんとなく気付いていた。侑の方も、隠す気がなかったのだろう。それが少しくすぐったいようで、居心地がいいと思うようになってからは、私も侑のことを好きになっていた。

 あの侑なのだから、女の子が夢見るような告白をしてくれるのだろう。などと考えていたのが間違いだった。

「文句あるならフれや! 俺かてお前なんか願い下げや!」

 目の前にいるのは、告白をしているのだか喧嘩しているのかわからない十七歳児である。侑につられて、私まで語気が強くなる。

「いや付き合うわ! だって私も侑好きやもん!」

 勢いを殺さないまま、侑も言葉を返す。

「あーあ最悪や! 最悪の彼女やわ!」
「侑こそ最悪の彼氏やわ!」

 声だけ聞けば、私達は喧嘩をしているように思えるのだろう。だが実際は、お互いに照れた顔をして目線をそらしている。何なら先程から、体の両脇に侑の手を差し込まれている。私が一歩前へ出ると、侑は私の背中に手を回した。初めて嗅ぐ侑の匂いは、私の脳にくらりと効いた。