▼ ▲ ▼
佐久早の一つ前の、私の席を友達に貸し出していた。というのも私の友達が佐久早を好きで、佐久早と昼休みに会話をするのに私の席はうってつけだからだ。
話題をひねり出す彼女に対し、佐久早は「うん」とか「ああ」と返していた。今日はこれ以上の収穫はないと悟ったのか、友達は足早に退散した。代わりに私が自席へ着くと、佐久早が大きなため息をついた。まるで悩ましい少女のような。
「どうしたの? 好かれるのなんていつものことじゃん」
別に彼女だって好意を隠していたわけではないのだし、佐久早だって気付いているだろう。佐久早は特に驚くでもなく視線を上げた。
「お前の友達だろ」
強く何かを訴えかけるような目が私を見ている。
「だったら何よ」
佐久早はじっと目線を強めた後、拗ねたように視線をそらした。
「後で面倒臭いことになっても知らないからな」
それはまるで脅迫のような言い方だった。佐久早と私の友達が恋愛関係になることで、私に何の害があると言うのか。「面倒臭いこと」というのは、どことなく女同士の諍いを連想させる。
「何で私に言うの!」
唇を尖らせるが、佐久早は一度鼻を鳴らしたきり答えてくれない。私と友達で佐久早の奪い合いをするわけでもあるまいに、何故そのような態度をとるのだろうか。佐久早を好きなのは友達だけで、私は佐久早と友好な関係を築いているというのに。自分で気付けとでも言いたげなその態度が、妙に気にかかった。
/kougk/novel/6/?index=1