▼ ▲ ▼

 凛が私に返事をしたのは私が告白をしてからきっかり一週間経ってからのことだった。凛のサッカーにかける情熱を考えれば、結果は明らかだった。さらに告白した時の凛の表情を見れば、私に可能性はなかった。それなのに、凛は一週間何を葛藤していたのだろう。凛のことだから、相手を傷付けずに断る方法など考えなさそうなのに。

 凛は私と対峙し、大きく息を吸った。それから、私と付き合えない旨を述べた。

「好きになってくれてありがとうなんて言わねえぞ。こっちはお前のせいで散々苦しんだんだ。お前に告白されてからお前のこと以外考えられなくなった」

 もっと沈鬱な気持ちになるかと思っていた。でも、待っていたのは意外な言葉だった。私は目を瞬き、凛の言ったことを自分の中で繰り返す。

「凛、私をフりたいんだよね?」

 これでは、逆のことを言っているみたいだ。つまり、私が好きだと。

 バレンタインのチョコだって簡単に断ってしまうくせに、私が好きだと言ったら悩むのだ。苦しむのだ。私は凛を好きなくせに、凛が私のせいで苦しんでいることが嬉しくなった。凛には幸せでいてほしいはずなのに、どうしてだろう。

「黙れ。恋愛感情持つなら俺と親しくなんかなるな」

 そう言う凛の人間関係の不器用さが愛おしくなる。私は笑って手を広げた。

「別にフラれても私は凛の親友のままだよ」

 凛はこれほど苦しんだのだ。私が好意を隠して友達として付き合うことなど造作もない。凛よりは人間関係構築に優れている自信はある。しかし、凛は苦々しい表情をした。

「それじゃお前が無理してんだろうが」

 ここで頷いておけば楽なのに、やはり凛は不器用な人だ。最後まで私に情けをかけてしまうあたり、残酷な人だ。私は「そうだね」と眉を下げた。私は凛のそういうところを好きになったのだ。