同じ、傷を持った子に出会った。自分と同じ左側の頬に、目の下から一直線に引かれた痛々しい傷あとがある女の子。
女の子なのに――。
はじめてみた瞬間、俺が一番に思ったことはそれだった。
とてもきれいな顔。あわい藤色の瞳に金色の髪の毛。きれいなのにもったいないな…なんて、
心の中でつぶやいたつもりだったんだけどついつい口に出てしまっていたようで、気付いたらキッと睨まれてなんでかクナイが飛んできた。
きっと、一目惚れというやつだったんだと思う。でもこうやって照れてクナイを投げてくる姿を見てもっと好きになった。
「うっ……あぁ……ッ」
「よぉ、探したぜ兄ちゃん」
「くっ、てめッ、ぬあッ」
覚えているのは痛みと身体がどんどん冷えていく感覚。
遠くなる意識の中で最後に耳にしたのは――
あれ、なんだっけ……思い出せない……。
「ん……今日は、ラーメンで……あ、しょうゆね……」
「なんつーはっきりした寝言だよこれ」
「ラーメンはしょうゆよりあっさり塩派アル」
「いや誰も神楽ちゃんの好み聞いてないからね」
なんだ?あったかい……
「ちょっとあんたたち、怪我人囲んで何してんだい。せっかく寝てんのに起きちまうだろうが」
「……いや、起きてますけど……」
「!」
あったかいなと思えば布団に入ってたのか。どうりであったかいわけだ。ん?あったかい?
あったかい……
「あっつ!暑い!何ここめっちゃくちゃあっつい!」
「悪いね、うちにはエアコンなんてハイカラなもんはないんだよ」
「あーあづー、いい加減エアコンつけろよババァ。これじゃ暑くて客もよりつかねェぞ」
「エアコンは電気代がかかります。今のお登勢さまにはそれを支払う余裕はありません」
「あっ、じゃあ源外さんに頼んで作ってもらえばいいんじゃないですか」
「やめとけ新八。あいつはどうせロクなもん作らねぇよ。また厄介ごとに巻き込まれるのはごめんだぜ」
「坂田サーンガ家賃払エバイイハナシデスネー」
「キャサリンのいう通りさね。あんた何か月分滞納してるかわかってんのかい?」
「えっ…や、ほら、俺は…あとで一括で払うタイプだから。年末にどーんと」
「去年の年末に払ってもらった覚えはないけどね。そういえば、最後の支払いはいつだったかね」
「だぁぁー!うるっせえなババァ!あとで払うっつてんだろ!」
「そのあとではいつになるのかって聞いてんだよ!」
「銀ちゃん、私アイス食べたいアル。バーゲンダッシュがイイネ」
「んな高ぇもん買えるか!贅沢言ってないでバリバリくんで我慢しなさい!」
「いやアル!バリバリくん飽きたアル!頭にキーンとくるのいやネ!」
「あの、俺の話聞いてましたか?」
「「「「「あ?」」」」」
な、なんで俺にらまれてるの……?
ってか…
「っ、いってぇ…」
「まだ動いてはいけません」
緑色の髪の子が話しかけてきた。肌が真っ白でかわいい。
「今朝、血塗れて倒れてたあんたをたまが拾ってきたんだよ」
「た、ま…?」
「はい、私のことです」
「あ、あぁ、きみがたまちゃんね」
なるほど……それにしてもこの人たち、なんか怪しい…
「いやいや、怪しいのはお前の方だから」
「えっ?」
「心の声、ばっちり声に出てましたよ…」
「うわっ、まじか」
詳しい話を聞いてみると、俺は血まみれでこの店のゴミ捨て場に倒れていたらしい。それをこのお掃除ロボット?のたまちゃんが拾ってきてくれて
それから今に至る。というわけである。
「助けてもらっちゃったみたいで、ありがとうございます」
「で、おめぇどこのだれよ。名前くらいあんだろ?」
「名前……」
「おいおい、まさか名前ねぇとかいわねぇだろうな。面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだぜ」
「いや、覚えてますよ。浅葱です。どこの誰…は説明しづらいな。俺、流れ者なんで」
「大丈夫なのか?素性に知れねぇやつ連れ込んで」
「たまもまたやっかいなのを拾って来たね」
な、なに?俺ここにいちゃまずい感じ?
ってか、そうじゃない、今は…
「あの!暑いんですけど!しかもなんで布団にくるまって縄で縛られてるの俺!?悪い事しましたっけ!?」
「血塗れで倒れているなんて怪しすぎる。目覚めたら何をするか分からないから縛っておけと、銀時さまが」
「銀時!?どれ!誰!?」
「……………銀さん」
「銀ちゃん、呼ばれてるアルよ」
「よ、よよよよ呼ばれてなんかないし?ってか銀さんて誰???俺そんな人知らないし!?」
「銀時さま」
「だぁぁぁ!なんだよてめェら!!そうです!俺が銀さんです!万事屋の坂田銀時です!!」
「……万事屋?」
なんでも銀時さんと新八くん神楽ちゃんは万事屋所謂何でも屋をやっているらしく、俺のこともこの店の店主、お登勢さんからどうにかしてほしいと
頼まれていたようだった。どうやら俺はここで完全に怪しい者扱いらしい。いくら流れ者だからってひどい話だ。
その後、縄を解かれ布団から解放された俺は店の二階にある銀時さんたちの万事屋に連れていかれた。そして今、事情聴取を受けている。
「本当に俺、怪しい者じゃないんです」
「どうだか」
「怪しい人って自分は怪しくないって言いますよね」
「じゃ、こいつは怪しい奴アル」
「ああぁぁぁッ、どうすればわかってもらえるんだぁぁぁぁあッ」
「それに、勝手に調べさせてもらったが、てめぇの刀。どういうことだこりゃ」
俺の刀を取り出した銀時さんは鞘から刀を抜いた。そして現れたのは――
「!これ!」
「刃がちょっとしかないアル」
「どういうことですか、浅葱さん!」
「いや……それは……」
「まさか、お前めちゃくちゃ弱いアルか!」
「え」
「刀折られて敵に負けて血まみれの状態でゴミ捨て場に捨てられてたってわけか……武士の魂を折られちまうなんて…
まぁ、元気だせって。いい鍛冶職人紹介してやっから」
銀時さんは俺に同情するように肩をぽんぽんと叩いてくる。そうじゃ、ないんだけどな……
そういえば…
「俺が拾われたときって近くに誰もいませんでした?」
「ひとりで倒れてたってたまさんが言ってましたよ。あっ、それと、近くに点々と血痕があったらしくてどうやらどこからか引きずられてきたんじゃないかって」
「ったく迷惑な話だよなぁ。いくら何でも屋って言ったって得たいの知れねぇ流れ者の保護までやってませんよってな」
「あぁ…、ですよね。すみません、ご迷惑をおかけしちゃって。でも、傷もだいたい良くなったので、俺そろそろ失礼しますね」
「ちょ、ちょっと!まだたまさんが安静にって!」
「いや〜でも迷惑かけるのだけは嫌なので〜」
で、浅葱出ていく。でも次の日。
「あっ、おはようございます」へらへら
「おお」
「朝ごはん、出来てますよ。あっ、でも俺料理とかしたことないんでこんなになっちゃいましたけど。多分食えるんで。じゃ」へらへら
「わりぃな。ありがとよ……って、おいおいおいおい待て待て待て!」
「ん?なんですか?俺掃除とかは全然できませんよ?乱す方専門なので」へらへら
「そうじゃねェだろ!!なんでお前まだいるんだよ!」
「いや〜実は全然金がなくて〜。どこにも行けないんですよね。だからお登勢さんの店で働かせてもらうことになって」へらへら
俺の話を聞いた銀時さんはえらいスピードで飛び出していき、とんでもないいきおいで階段を駆け下りていった。
「ん〜、銀ちゃんうるさいアル〜」
「あっ、神楽ちゃんおはよう」
「お?なんでお前まだいるアルか?」
「しばらくお登勢さんのお店で働くことになったから、よろしく。それと朝ごはんできてるよ」へ
「!お前!気に入ったネ!私の弟子にしてやるネ!」
「俺の方が年上なんだけどな〜あははっ」
そのころお登勢の店では。
「ババァ!!!なんであいつ雇ってんだよ!ボケすぎだろ!!」
「金がないって言ってんだ。仕方ないだろ」
「あいつどこのどいつかも分からねぇしかも血まみれで倒れてたやつなんだぞ!もしなんかあぶねぇ奴らに追われてたらどうすんだよ!」
「そのときはそのときだ」
「どうせ俺たちになんとかしろっていうんだろ!?」
「家賃払わないんだったらそれくらいの仕事してもらわないと困るんだよ!」
「俺が死んでもいいのか!?」
「ふっ、あんたっみたいなやつ死にやしないさ」
「ババァァ!!」」
その後、
「お、おはようござい、ます…」
「おはよう新八くん」へらへら
「……あの…」
「なんで、当たり前のようにここに神楽ちゃんにご飯よそってるんですか…?」
「こいつは今日からわたしの弟子ネ、もぐもぐ」
「弟子!?何があったの神楽ちゃん!?ってか、銀さんは?」
「お登勢さんと仲良く喧嘩してたよ」へらへら
「仲良く喧嘩って、矛盾してるから…」
結局お登勢さんのお店の従業員兼万事屋の従業員になった。
「今日からよろしくお願いします」へらへら
「チッ、俺は認めねぇからな」
「あっ、今夜×××のお店に飲みに行きませんか?かわいい女の子5人手配しましたよ。あとお代はツケにしておいてあとで俺が払っておきます」へらへら
「よし、認める!よろしくな!えーっとなんだっけ?とりあえずこれから頼むぞ!期待してるからな!!!」
「おいぃぃぃ!お前ただキャバクラ行きたいだけだろうがァ!しかも浅葱さんもなんでもう女の子とて手配出来ちゃってるんですか!?
やっぱり怪しすぎるでしょ!」
「ばァろう新八!酒と女に詳しい男はどこいってもやってけんだよ。どこいっても優秀な従業員なんです〜」
「しかもこのご飯、見た目はグロテスクだけど以外とイケるネ」
「あぁぁァァァッ!二人とも丸め込まれてるぅぅぅぅ!!!」
それから何週間かして…
「吉原?」
「かわいい姉ちゃんいっぱいいるところだ」
「おっ!いいですね!ぜひ行きたいです!」
「あ〜でもなぁ〜」
「どうしたんですか?」
「今日はちょっとめんどうな奴と会わなきゃいけなくて…」
「めんどう?」
「そうそう、あいつ怖いんだぜ。怒らせるとすぐにクナイぶん投げてくるから」
「えっ、クナイ?忍者なんですか?」
「銀さん、そんなこと言ってるとまた月詠さんに怒られちゃいますよ」
「ほう、そんなにクナイが欲しいか」ぐさっ
「あぁぁぁァァァッ」
「ぎ、銀さん!」
「月詠さん!地上に来てたんですか!」
「主らが遅いから様子を見に来たんじゃ」
ただの、流れ者