しとしとと雨が降る夜に桃色の傘が一つ、その下には二人。この天気のせいか、それとももう時間が遅いせいか、辺りは静かで周りには私と孝介以外誰もいない。

今日は私たちの近所に住んでいるお姉さんの結婚式だった。昔から彼女と仲良くしてもらっていた私と彼は結婚式に招待された。真っ白なドレスを身にまとい、その顔に笑みを浮かべていたお姉さんはとても綺麗で思わず見とれてしまった。すごく、幸せそうだった。

「お姉さん、綺麗だったね」
「ああ」
「良いなあ…」
「何、お前結婚したいの?」
「だって花嫁は女の子の夢だもん」

帰り道、ゆっくりと歩きながらそう言った私に彼はただふーん、と言っただけだった。会話が切れる。
式場を出た頃に降りだした雨はいつの間にか強くなっていた。彼は傘を持っていなかったから、私は彼を自分の傘に入れてあげた訳だが、私の小さな傘だけでは二人を雨から守るのは到底無理で、私たちの肩はすでに濡れていた。

「相手とかいんのか?」
「へ、何が?」
「さっきの話」
「ああ、それね」

いるよ、まだ未定だけどね。そう言うと彼がじっと私を見てきた。自然と私たちの足が止まる。私も彼を見る。

「誰だよ、そいつ」
「さあ。誰でしょう」
「茶化すなよ」
「孝介」
「…は?」
「だから、孝介だって」

彼を指差しながらそう言ってやる。彼はぽかん、と口を開けて固まっていて、私は思わずにやりと笑ってしまった。してやったり。

「お前、俺が好きなの?」
「うん、そう」
「そっか」
「孝介は…?」

そう問うと、彼は私の左手を取って薬指に一つ、キスを落とした。彼は顔を上げにやりと笑い、私はその行為に顔を赤く染めた。

「俺もお前が好き」
「孝介…」
「なあ、結婚しようか」
「…もちろん」

今度は私も彼の左手の薬指にキスをする。お互いに顔は真っ赤で、私たちは笑いあった。

真っ白なドレスを着ていないけれど、結婚指輪はないけれど。私は今、すごく幸せなんだと思う。目を閉じて、私たちは誓いのキスをした。


ジューンブライドは微笑んだ


090613

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