君の笑顔を見ていると、
胸が苦しくなるのです。
こう、ぎゅって心臓を鷲掴みされたかんじ。ああ、苦しい、もう嫌だ。彼は皆に優しくて、皆から頼られていて、皆から好かれていて。だって、今もほら、可愛い可愛い女の子が彼の席の前で顔を赤くさせて立っている。
「さ、栄口くん…!」
「どうしたの?」
「あ、あのね、その…」
あの女の子は緊張のあまり、うまく口が回らないみたい。対する彼は、落ち着いて、とか、ゆっくりでいいから、とかにこにこしながら女の子に声をかけている。いらいら。女の子にじゃなくて栄口に。ああもう、あなたはイイヒトすぎるんだよ、私が嫌いになるくらいに。
「おい、大丈夫か」
「へーき、へーき」
「なら良いけど…」
私があまりにも彼を睨んでいたため、隣の席の巣山が心配して話しかけてきてくれた。巣山は結構良いやつだ、彼と違って。
「あんま溜め込むなよー」
「…う、ふえっ…す、すやまあ…!」
「泣きたきゃ泣け」
うっかり巣山の言葉に思わず涙が溢れる。声が震える。ぽんぽん、と私の頭を撫でてくれる巣山はほんと紳士だと思う。将来良い旦那さんになるよ、うん、間違いない、私が保証する。
巣山に慰めてもらっていると、女の子と話し終わったのか、彼がこっちにやって来た。私の様子を見るなり、彼は驚いたような表情を見せた。
「あれ、何で泣いてんの?」
「…ばかえぐち」
「え、何それ、酷くない!?」
「お前なんて嫌いだー!」
「ええーっ!?」
俺、何か悪いことした?そう訊ねてくる彼を無視して私は机に伏せた。彼は巣山にも訊ねたが、さあ、とだけ返されていた。ええーっ!?とまた声を上げる。うるさい。
「今日は何か荒れてるね」
「栄口のせいだしー」
「え、俺のせいなの?巣山、ほんと?」
「俺は知らん」
「ああもう、」
巣山の答えに彼は苦笑いを浮かべた。ざまーみろ。心の中で悪態をついてから夢の世界へ旅立とうとした時、唐突に自分の名前を呼ばれた。仕方なく顔を上げると、そこには申し訳なさそうに笑っている彼の姿があった。その表情、嫌い。
「ほんと、何があったんだよ」
「だ、だから、栄口の」
「俺たちって幼なじみだろ?悩みとかあるなら言ってくれても良いじゃん」
「……、」
私の言葉を遮った彼の言葉はあまりにも残酷で、止まっていた涙がまた溢れそうになった。堪えるように唇をぎゅっ、と噛み締めてうつ向く。すると、何を思ったのか、彼は巣山と同じように私の頭をぽんぽん、と撫でた。同じように撫でられているのに、彼のは全然心地よく、ない。彼がまた嫌いになった。
鉛のように重く、沈む
幼なじみとしてしか見てくれない彼と、幼なじみの枠から抜け出せない自分にいらいら、な話。
090726