おーっす、俺は音駒高校男子バレー部イケメン主将黒尾鉄朗。今日は俺の幼馴染の話をしようと思う。その幼馴染は自分を含めあんまり他人興味を示すことがなく、基本ゲームか携帯ばかり触っているかなり内向的な性格だ。しかしセッターとしての才能はピカイチ。音駒の背骨であり、脳であり、心臓だ。そいつは・・・
「おい研磨!帰るぞ!」
「うん」
「ほら、ちゃんとカバン持て」
「・・・クロお母さんみたい」
「誰がお母さんだ、誰が」
部活の通常練習が終わった後に自主練をするのは俺の日課であり、それをしている間部室でゲームをして俺を待っているのが研磨。これが俺たちの日常である。1人で帰れないのか、と言いかけた時もあるがどれだけ通い慣れた道でもいつの間にか変な所に行って迷子になるのが研磨であり、それを探すのは俺の役目である。それならば一緒に帰った方が安心するからいいんだけど、本当俺は研磨の親かよ。
「・・・ねぇクロ」
「んー?」
「やっぱりなんでもない」
「なんだよ、言えよ。気になるじゃねーか」
「・・・」
「研磨くーん?」
「ちょっと聞きたいことあるんだけど」
「(なんだ珍しい)どうした?」
「・・・吽のことで」
「!!」
研磨は超が付くほどの人見知りだ。常に人から距離を置き、自分から近寄ることはほぼ無い。しかも烏野のチビちゃんくらいグイグイ来られないと仲良くなることもない。そんな研磨に最近彼女ができた。俺は感動した。あの研磨に!彼女が!
「吽ちゃんがどうかした?何かあったのか」
「・・・今度」
「うん」
「・・・誕生日だから、プレゼント」
研磨の彼女の吽ちゃんは1年生で、マネージャーがいない音駒にリエーフが仲のいいクラスメートを連れてきたのが始まりだった。しかも研磨の一目惚れで、研磨から告白したんだと!俺は嬉しいぜ・・・研磨・・・!
っと、話が逸れちまったな。研磨の話を聞く限りおそらくもうすぐ吽ちゃんの誕生日で、何あげたらいいかわからない、ということか
「何か欲しいものとか聞いてないのか?」
「聞いてない」
「お前らあんま会話しねーもんな」
「・・・・・・」
「何でもいいんじゃねーか?研磨があげたものなら何でも喜びそうだけど」
「・・・その何でもが思いつかないからクロに聞いてるんだけど」
「あー・・・研磨、お前はどんなの渡したいんだ?」
「どんなもの・・・」
「実用的なものとか、身に付けるものとかさー」
「・・・吽が」
「ん?」
「吽が、喜ぶもの」
なんてやつだ。部外者でありながら甘酸っぱさを胸いっぱいに感じた。今すごく研磨の頭を撫でてやりたい気持ちだがそんなことしたら確実に研磨の機嫌が悪くなるからグッと抑えて、うーんと悩むフリをする。あー青春してるなぁ・・・俺も青春してーなぁ
「俺がさりげなく聞いてやろうか?」
「クロにそんなことできるの」
「俺相談乗ってあげてる側なんだけど」
「じゃあ...オネガイシマス」
「おう」
初めてみる研磨の様子に少しむずむずした気持ちと、この先どうなっていくのかというワクワクした気持ちが入り混じってソワソワしていた。
気がつけば次の日、1年の教室、目の前吽ちゃん
「欲しいもの、ですか」
「そ、毎日マネがんばってくれてるからさ、誕生日もちゃんと祝いたいんだよ」
「うーん・・・今これといって欲しいものはないんですよね・・・」
「あー・・・じゃあお願いとか?」
「・・・・・・な、なんでもいいんですか?」
「お!なんかあるのか?」
「その・・・」
「あれ、研磨くんどうしたの?クロ先輩、先帰ったよ」
「吽、誕生日おめでとう」
「あ、ありがとう?日付変わった時もメールくれたの嬉しかったよ」
「帰るよ」
「えぇ?手!研磨くん手!研磨くんの手が私の手を掴んでる!」
「・・・うるさい、そうしてるんだから当たり前」
「は、はい」
「クロに言わなくておれに直接言ってよ」
「・・・?」
「・・・おれと一緒に帰りたかったんでしょ」
「!!」
「こんなのがプレゼントでよかったの?」
「うん!すっごい嬉しい!」
「・・・そう」
「研磨くん顔真っ赤」
「うるさい」
クロは苦労人
「黒尾!何してるんだよ・・・あれ、研磨と吽ちゃんじゃん。うわ、手つないで帰ってる羨ましい・・・」
「・・・」
「巣立つ雛鳥を見送る親鳥みたいだな、ほらそんなところからコソコソ隠れてみないで俺たちも帰るぞ!」
「・・・おう」
151022
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