「クリスマス・・・クリスマス、ねぇ・・・」
「なんだ突然」
「なんで世の中の人間ってイエスキリストの誕生日にこんなに浮かれてるのかなぁ・・・」
「彼氏がいねぇから僻むなよ」
「違う!・・・・・・くもないけど、」


高校に入ったらもっと華やかな感じになると思っていた。自分自身が、ではなくて雰囲気が、周りが。何がと言われて正確な答えを出すことはできないけれど何となく中学生の頃夢描いていたキラキラした世界に無条件に入れるのと思っていた。そんな憧れの高校生になって2度目の冬、気がついたら現実は厳しかった。


「予定ねぇのか・・・って部活か」
「そーよ、そういう田中は・・・聞くまでもないか」
「おー、部活に決まってんだろ」
「だよね、バレー馬鹿だもんね」
「阿もバレー馬鹿だろ」
「田中に言われるとすっごいむかつく」
「なんだとコラ!」


私の目の前の席の男は田中というバレー男。坊主で目つき悪いし口も悪いし頭も悪いし机の周りは汚いけどバレーに対する熱はすごいし、こう見えて義理堅く優しいやつである。私もバレー部に所属しており、ウマも合い、なんだかんだ1年生の頃から仲良しなのだ。


「世の中はクリスマスという一大イベントなのですよー田中クン」
「さっきからその話してんだろ」
「私もわいわいきゃぴきゃぴしたかった・・・!!」
「阿が!?やべぇ想像しただけで寒気が・・・」
「うるさいぞ坊主め!私も駅前のイルミネーションを清い心で見たかったよ・・・」


キラキラピカピカ光るイルミネーションが私は嫌いだ。光の集合体を見て何が楽しいのだ、というくらい私の心は荒んでいた。本当は彼氏と「寒いねー」なんて言いながら見たい気持ちでいっぱいなのにそんなイベントかすりもしないから憎むことだけを考えている。可愛くない。


「駅前のイルミネーション?」
「あれ、田中知らない?今年からできたんだけど、おっきいツリーが出来たんだよ」
「へぇー・・・女子ってそういうの好きだよな」
「そーいう田中クンはオンナコゴロってのがわかってないねぇ。あー私もイケメンの彼氏と一緒にイルミネーション見に行きたかったなぁ・・・」


なんだかんだ言いながら行きたいという女心は複雑なのだ。目の前のバレー坊主は少し考えた顔をした後「そーか」と言って前を向いた。なんだよ調子狂うな。いつもなら「女ァ?お前が?おいおい鏡見ろよ」くらい言い返してくるのに。まぁいいや。そんな話をしたのはお昼休み終わり。今はちょうど部活の練習が終わり、自主練をやろうか悩んでいた時であった


「吽ちゃん、今日は帰ったほうがいいんじゃない?」
「あ、主将!・・・なんでですか?」
「ほら今日はクリスマスだし!」
「え゛・・・でも私予定もないですし・・・」
「いいからいいから!」


ぐいぐいと背中を押されて体育館から強制退去。みんながみんな予定があると思わないでくださいよ・・・あ、もしかして主将が予定あったとか?今日鍵当番だったから早く帰って欲しかったのかも。それは失礼なことをしてしまった。空気の読めない後輩で本当にごめんなさい。私が鍵当番変わればよかったなぁ、なんて思いながら、制服に着替えるのもめんどくさくて汗かいてびちょびちょのTシャツだけ着替えて、黒いジャージを着る。


「おせぇ」
「ん?え、あれ、田中?どうしたの?」
「・・・行くぞ」
「はい?」


部室から出てすぐのところで携帯をいじりながら待っていたのはさっきまで回想の中にいた席が前の坊主。サイズがちがうだけの同じような黒いジャージを身にまとった姿で私を待っていたらしい。そんな私の姿を視界に入れた途端「行くぞ」という声、あれ、私田中と何か約束したっけ?いや、してないはず。私が戸惑っているのに痺れを切らしたのか、田中は私の腕を掴み、歩き始めた


「ちょ、ちょっと!」
「うるせぇ」
「うるさいって・・・私の腕、バレーボールと同じくらい掴んでるよね、少し痛いんだけど」
「あ、・・・・・・わりぃ」


そう言って少し力を緩めた、が一向に私の腕を掴む手は離してくれない田中。私の半歩先を進む彼は異様なくらい静かだ。普段は全力で大声を出し、全力で馬鹿やってるこいつが気味悪いくらい静か。何か変なものでも食ったのか、それとも練習で何かやらかしたのか。あぁそういえばこいつも本来なら自主練してる時間のはずなの、


「に、?」
「見たかったんだろ」


ずっと田中の背中を見ていたからどこに向かってるなんてほとんど検討がつかなかった。地元なのに。田中が私の目の前から少し身体をズラすとそこに見えたのは、駅前のイルミネーション


「田中、どうして・・・?」
「あ?・・・お前が話してたから気になったんだよ」
「私とかじゃなくて潔子さん連れてきたらよかったんじゃないの?」
「あー!ガタガタうるせぇ!」


黙って見てろ、そう言って田中は視線を斜め上に向けた。今日までこのイルミネーションを見たら醜い心でいっぱいだったのになんでだろう、今は心がぎゅうっと暖かかった。周りを見ると小洒落たカップルばかり。こんなジャージ着た二人組なんかいない、だけど何だか逆にそれが落ち着いた


「目がチカチカしてきた」
「ムードが無いねー」
「女子はこんなの好きなのか」
「なんか神秘的じゃない?」
「そーかぁ?」
「ん、素敵だなぁ・・・」
「へぇ・・・・・・」
「・・・ねー田中」
「んー」
「ありがとね」
「・・・おう」


マフラーで鼻の頭まで隠しても漏れ出る甘い雰囲気。こそばゆい感じがなんとも言えない。光を見つめている人と帰宅の人が交差する。ただ何もせずにぼうとキラキラ光る、光の集合体を見つめていた。すると左肩にドンという衝撃。わっ、とふらつく身体。とん、と受け止めたのは横にいたクラスメイト。少し顔を上げると絡む視線。普段の生活じゃありえない距離。顔に熱が溜まっているけど顔が赤いのはきっと赤い光の所為で


「!!・・・あ、明日も早いし帰ろっか」
「お、おう・・・・・・家まで送る」
「いいよ!そんな、もう遅いし・・・」
「ちゃんと家まで遅れって大地さんから言われてんだよ」
「大地・・・・・・澤村先輩?」
「!!今の忘れろ!」
「えっ、あ、う、うん」
「・・・・・・」
「・・・家までお願いしようかな」
「・・・おう」
「来年もさ」
「・・・・・・」
「また連れて行ってくれる?」
「・・・おう」



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