hand of cat
校長室の手前には最近出来たばかりの部屋があった。ドアの前には[secretary]という文字。そう、吽の部屋であった。
「うん、アルバスへの書類も全部終わったし、連絡も終わった・・・うーん、全部終わり!紅茶でも淹れようかな・・・ん?はーい、空いてますよーどうぞー」
「・・・邪魔をする」
「あら、セブルス。珍しいどうしたの?」
「どうせ暇だろうと思ったのでね」
「失礼な、今終わったばかりよ」
「ふん、じゃあ今は暇なのだろう」
「まぁ暇だけど」
「じゃあ来い、手伝え」
え、と反論もする暇なくローブを翻し、歩くスネイプ。吽はやれやれと言った様子で椅子から立ち上がった。また書類整理だろうか、とスネイプの部屋に向かうと思いきやついたのは魔法薬学のある教室。
「教室・・・?今日は何を手伝えばいいの?」
「この薬を作れ」
「まさかセブルスが私に薬を作るのを頼むなんて!」
「出来れば頼みたくないが我輩もやらねばならぬ事が多いのでね」
「・・・素直に頼めばいいものの」
「何か言ったか?」
「いーえ、それで、これを作ったらいいのね」
「あぁ、3回分作ってくれ。完成はこの青になるからな、くれぐれも赤色にしないよう」
「まさか、この薬・・・!」
ニヤリと笑うスネイプに吽は昔を思い出した。あれは1年生。スリザリンと合同授業であった。まだ友達も出来ていないそんな時にスリザリンの余った人と組まねばならなくなり、それがスネイプであった。挨拶をしようとした時に「邪魔だけはするな」そう言われたのを吽は今でも覚えている。
1人でテキパキと進めるスネイプに手持ち無沙汰を感じた吽が作業の途中で必要のない材料を入れてしまい、青に出来上がるはずが何故か赤色に出来上がってしまったのだ。つまるところ失敗したのだ。
「・・・そうやってネチネチ昔のこと引きずってる男はモテないよ」
「モテなくて結構」
「ふん、まぁいいけど?あれがきっかけでセブルスと仲良くなれたんだし」
「あの時他の奴と組んでたら阿に付きまとわれなくて済んだのか」
「素直じゃないなぁ、セブルスは」
「さっさと作れ」
「はいはい」
流石の吽も学生の頃作ったことあるとはいえ作り方を覚えてるわけではない。一緒に置いてあった教科書をみるとあの頃と変わらない書き込みが沢山入ったものがそこにあった。
「教科書変えなかったんだ」
「どういう意味だ」
「セブルス、自分でいろいろやり方変えてたじゃない?この教科書はもう使わなくてもっと正確に載ってそうなの使ってると思ってた」
「私はより完璧な薬を作りたかっただけだ。教科書に書いてあるので普通は充分だ」
「ふーん・・・?」
「何か言いたげですな?」
「これセブルスの教科書でしょ?相変わらず書き込み多いなぁって」
パラパラとページを開いて見ても書き込みのないページなどなかった。
しかも授業でやったことのないところまで書き込みがある。魔法薬学が苦手であった吽は理解できないといった顔で目的のページを開いていった。
「でもさ、ほんとセブルスってすごいよね」
「・・・なんの話だ」
「だってさ、普通教科書が正しいって思うじゃん。それでも自分で確かめてより良い方法見つけるって並大抵じゃできないよ」
「・・・」
「しかも1回や2回じゃこんな書き込みにならないだろうし、努力家だよね、セブルス」
「・・・黙って作れ」
はーい、と軽い返事を返し手を動かした吽に対し、スネイプの手は止まってしまった。
別に努力したつもりはなかった。ただただ自分の能力を高めたかっただけだった。なのに何故この女は自分のことをこんなにも評価するのだろうか。不思議でたまらなかった。この女に関しては長い時間を過ごせば過ごすほど謎は深まるのみ。
「おい」
「んー?」
「・・・いや、なんでもない」
「なに!気になるじゃん!」
ふ、と思えばスネイプは彼女のことを知らないことが多かった。理解できない部分も多かったがそれ以上にもう何年も一緒にいるというのに彼女に関する情報があまりに少ないことに気づいた。今更で、あるが。
「お前の好きなものは何だ」
「え!なになに突然!ビックリしてこの薬、赤色にするところだった!」
「やめろ。やっぱりいい、忘れろ」
「ど、どうしたのよ突然」
「なんでもない。鍋から目を離すな」
「・・・・・・私はチョコレートが好きよ。甘いものは大体好きだけどね。あとインクの匂いも好き。天気の日に日向ぼっこするのも好きだし、星空を眺めるのも好きね。あぁあと呪文学も好き」
「・・・そうか」
160910
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