恋愛のれの字も興味がなかった。高校生までは黙っていても女は周りに群がっていた。(こんなこと言ったら他の男に怒られる、が)
結婚なんて以ての外。適当に結婚して子どもできて老いゆく人生を過ごすのか、くらいの薄い認識。そんな人生を歩んで来た財前光であった。
「ーー・・・CG・・・Am」
膝の上には相棒のベースを乗せ、右手でパソコンのキーボードをカタカタといじる。この日は何故か、キーボードに触る手が止まる回数がいつもより多かった。
「あかん」
そう呟いて財前はDeleteキーを連打した。今日は2限しか授業もなく、バイトもない。久しぶりに時間をかけて作曲できると意気揚々としていたはずだった。曲はできている。しかし途中で財前はハッと何かに気づいた様子になり、削除していく。この繰り返しだ。何処かいつもと様子が違う。
「・・・・・・、」
彼は自分でも聞こえるか聞こえないかわからないぐらいの声量で呟いた。それは何故今日はこんなにも作曲がうまくいかない原因であった。そう、彼は上手く曲が作れない原因をわかっていた。
普段はロックやメタルといった激しい雰囲気の曲を作ることがほとんどであるが、今日出来上がる曲は普段の激しさが無く柔らかな雰囲気の曲ばかりなのだ。
「・・・吽さんに歌ってほしい曲ばっかり作るとかきしょすぎるわ」
あのライブ以来、彼の頭の中を占領していたのは引き込まれるような声を発していたあの彼女であった。 うるさい先輩はサポートで入ったということはあまりしっかり活動していたバンドではないのか、“俺の方がもっと吽さんの声を活かした曲を作れる”財前はそう思ってしかたなかった。それでもただ作曲家が歌い手に曲を提供するといった感情だけでもなかった。曲を作っていない時でも、文字通り四六時中、彼女のことを考えてしまう、これは、まさに、
「こい、してもうた?」
彼には恋という感情が未だ理解できていなかった。それは今まで恋愛というものを経験してなかったからである。そのため財前はこの感情が何なのか正確な判断をつけることはできなかったが、これが彼にとって初めての感情であってかつ今まで恋愛といううつつを抜かしていた奴等の言っていた感情にあまりに似ていたのだ。
「・・・んなわけあるか」
財前は頭を振り、もう一度画面に向かった。
161126
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