(ヒロイン:看護師)
「今日からこちらに異動となりました阿吽です。よろしくお願いします。」
今日から5階に新しい看護師が来た。この時期の異動は珍しい。おおかた異動を希望したのだろう、そうでなきゃこんな厳しい科にくるわけがない。そして希望理由はきっと、
「あんたも及川先生狙い?」
「・・・は?」
「希望異動だろ?うちに希望する人って大体及川先生狙いだし」
「オイカワ先生とは誰でしょうか」
ここに希望異動するやつは大体がうちの外科部長の及川先生狙いだ。そんな甘い考えでここに来るからここの厳しさに耐えれずすぐに辞めてしまう。
どうせ新しく来たこの女もそうだろうとばかり思っていた。
「私はずっとこの胸部心臓外科で働きたいと思っていました、しかし胸部は人間の大事な部分であり大変高いスキルが求められますので他の科で何年か学び、看護師としてある程度働けるようになったら異動しようと思って・・・異動しました」
「じゃあ」
「そのオイカワ先生とは誰か知りません」
「ほぉ、期待できるやつが来たじゃねーか」
「岩泉さん」
「俺はここの師長をしてる岩泉一だ。よろしくな」
「よろしくお願いします」
「つーか国見、お前の方が歴短いんだからお前タメ口使うんじゃねぇ!」
「あ、いいんです。ここの科では私の方がまだひよっこですから」
及川先生狙いの女より変な女が来た。生意気言っても飄々としてるし、かと言って年上面するわけでもない。真面目で、他の科で働いていただけあって無駄な動きがなかった。
「あっ!新しい子来てるじゃん!やっほー!俺はここの外科部長及川徹、よろしくね!」
「あぁ貴方が噂のオイカワ先生。しかもキラキラ先生のことだったんですか」
「キラキラ先生?」
「私が前にいた科でキラキラ先生がいると噂されていたんです、それが及川先生のことだったんですね」
「俺キラキラしてる!?」
「はい、うざいくらい」
「えぇ!?」
「ははっ、言うじゃねーか!」
「ちょっと!岩ちゃん!?」
しかも本人を見ても靡かない。どうせ面白いくらいくそ真面目なんだろうと思っていたが、そうでもなかったのだ。吽さんが来て3ヶ月くらい経った頃だった。
「国見、つかれた、ねむたい、甘いの欲しい」
「下のコンビニに行けばいいじゃないですか」
「やだ、疲れる」
「吽さんってオフモード入ると性格変わりますよね」
「だって常に気張っておくのしんどい」
面白い女。休憩とか休みの日はとことんオフモードに入るのだ。見ていて飽きない、最初はお硬そうな奴と思っていたが今は気になる人までランクアップ。日々仲良くなる度いろんな顔が見れる、楽しくないわけがない。
「国見ぃ」
「あぁもうクッキーでいいですか」
「国見がクッキーなんて可愛いね」
「・・・・・・」
「あ!戻さないで戻さないで!」
「今度から吽さんと休憩入るのやめよ」
「え、酷い。私国見と休憩入るの好きなのに」
「・・・なんですかそれ」
「私のこんな姿に引かずに付き合ってくれる人なんてほとんどいないもん」
「あぁ・・・別にいいと思いますけどね、俺は」
「国見も燃費型だもんねー」
「燃費型?」
「力を抜いていい時は抜いて、きちんとしなきゃいけない時はちゃんとする。国見は顔も変われば尚良し!」
「・・・一言多いですよ」
俺の性格を見抜いて理解してくれたのは及川先生で2人目。最近は周りもわかってきたが最初の方はひどかった。やる気ないならやめろなんて言われるのもざらで、及川先生がいなかったらとっくにここから離れていたはずだ。そんな俺をきちんと評価してくれている、そんなの
「嬉しくないわけないじゃん」
「ん?何か言った?」
「何でもないです」
「あ、そういえば5号の人のオペ出し、そろそろじゃないの?」
「やべっ!!気づいてたなら早く言ってくださいよ!」
「気づいてるかなーって?」
「やっぱり吽さんと休憩入るのやめよ」
「ごめんごめん、仕事終わったら駅前の居酒屋行こ、奢ってあげる!」
「遠慮します」
「えーかわいくないなー国見」
「かわいくなくて結構です」
時々むかつくし腹立つけどこの人の隣は居心地がいい。最近何故かこの人のことが頭から離れないけどそれはきっとまだ気づかなくて良い。
「じゃあこの前見つけたおいしーい塩キャラメル買ってきてあげる」
「・・・・・・それはもらってあげてもいいです」
「あはは、やっぱり国見かわいい!」
「うるさい」
今はこの関係が居心地良い。
160119
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