花が咲き、散る変化の時期に僕らの変わらない日常が始まった。
「じゃあ今日の練習は終わり」
「っしゃーーした!!!」
私立青葉城西学園バレー部は宮城県の中でも上位の強豪校である。
まだ肌寒いこの時期、新入生を加え、再スタートを図っていた。
「あの、片付け、手伝います」
「あ、いいよ大丈夫。1年生は早く帰って?明日も朝早いんだからゆっくり休んで」
「でも…」
「はじめー1年生帰していいでしょ?」
「当たり前だろ。さっさと帰れ」
「と、いうことだから。はい、お疲れ様ー」
そのバレー部のマネージャーを務めて3年目になる中野志帆は幼馴染で副部長である岩泉一に一言声をかけてドリンクボトルの山を持ち上げた。横を見るとビブスの山。はぁ、とため息をついて体育館の2階にいる女子高生に声をかけた。
「あかり!!ちょっとビブス運ぶの手伝って!!」
「えーめんどくさーい」
「あーあ、あかりが手伝ってくれたら及川と帰る時間が早まるんだけどなぁ」
「え、やるやる」
ちょろい、と小さく笑いながらマネージャーは呟いた。おそらく近くにあったのであろうスクールバッグを肩にかけて、2階の隅にある階段に駆けていく姿をみている彼女の背中に声をかけたのはバレー部の部長であり、先ほどの女子高生の彼氏である、
「ちょっと!人の彼女を勝手に使わないでくれる!?」
「及川の彼女の前に私の親友ですけど。それより及川は早く片付けて彼女と早く帰りたくないんだ?へぇ?」
「違うよ!マネージャー業させて俺の彼女がゴリラマネージャーみたいになったら困るじゃん?」
「あ?誰がゴリラだって?はじめ!スパイク10連発いくよ!及川宛に!!」
「任せろ」
「ストップ!ストップストップ!!岩ちゃん腕下ろして!!」
慌ててネットの裏側に逃げ込む部長と、眉間に皺を寄せてボールを手にする副部長。それを笑いながらみる部員。彼等が1年生の頃から変わらない光景であった。
「あれ、国見?帰ったんじゃないの?」
「ちょっと、忘れ物があって…先輩帰らないんですか」
「私今ちょうど日誌書き終わったからもう帰るよ」
「しほさん、あの、」
「おーい!帰るべー!!」
「はーい!!すぐいく!!えっと、どうしたの?」
「…いや、なんでもないです」
「そ?じゃあまた明日ね」
「…お疲れ様です」
そんな彼等の18回目の春が訪れようとしていた。
ー高校3年生 4月