あなたは私が好きなんだってこと。
パー子は、屯所の自室で書類を書いている土方の横に座り庭を眺めていた。夏の終わりも近付き夕暮れになると涼しい風が頬をかすめる。
窓際に飾ってあった風鈴が音を鳴らすとパー子はフゥと小さく息を吐いた。
『ねえ、トシ。もう夏終わっちゃうね』
「…」
仕事中に話しかけても少し悪戯しても反応がないのはいつものことで、パー子はそのまま広い背中にもたれ掛かって目を閉じた。
このまま土方の仕事が片付くまでそのまま過ごすのが日課だ。
傍から見れば二人の関係は恋人同士のように見えて、よく周りからも茶化されるが実際は2人は"気の合う幼なじみ止まり"なのだ。
お互い周りに茶化されようが、休日にこうして2人で過ごそうが、自分たちの関係を問うことはしなかった。
だが、今日のパー子は少し違った。
パー子は先日真選組の他の隊士に土方と本当に付き合ってるのか問われ、付き合ってないと答えると交際を迫られたのだ。
隊士に返す返事は決まっているが パー子は目をつぶりながら、どうせ返事のないだろうその背中に呟いた。
『私達ってただの幼なじみ?』
スラスラと動く筆が止まる気配はなかったが、意外にも返事が来た。
「オレはそんな風に思ったことねえよ」
『そうだったんだ。初耳』
「お前はどーなんだよ」
『トシと同じだよ』
そう言って笑うと、土方は"オレも初耳だ"と呟いた。
相変わらず動じることなく筆を動かす土方と、その背中にもたれ掛かるパー子。
それ以上言葉を交わすことはなかったが長く一緒にいれば言葉がなくても空気で伝わるものだ。
(トシ赤くなってるでしょ?)
(なってねえ)
(背中が熱くなってきたもん)
(お前もな)
あなたは私が好きなんだってこと。