私はどこにもいかないよ。





夜も更ける頃、名字と神威は地球にいる神楽に会う為 歌舞伎町を目指し手を繋いで歩いていた。
外は寒く2人の唇から吐く息は白い煙となって消え、名字は自身のマフラーに顔を埋めた。




『ねえ、痛いんだけど。』

「え?これで?じゃあこれくらい?」

『痛い痛い痛い?!折れるっ!手ぇ折れるから!!』



ぎゃあぎゃあと喚く名字に満足気な顔をして神威はパッとその手のひらの力を緩める。
名字は涙目になりながら、神威をキッと睨んだ。



『ちょっと!何で痛いって言ってるのに力入れるバカどこにいんの?!』

「ごめんごめん」

『ごめんって思うなら大人しくしてて!ここ歩いてるだけで人のこと転ばせるわ、川に落とそうとするわ…もう何なの?!』

「だって名字の反応面白いんだもん」

『神楽ちゃんと約束したのに、遅れちゃうじゃん!』



"連れてくるんじゃなかった"とブツブツと文句を言う名字を余所目に、神威はニコリと笑ってもう一度そっと手を握る。


「軽く、添えればいいんでしょ?」

『出来るなら最初からそうしてよ。』


そう言って、2人はまた手を繋いで歩き出すが名字は手に痛みを感じてまた神威を睨みつけた。




『いい加減怒るよ?』

「だって…どっか行っちゃいそうなんだもん」



そう言う神威は先程とは違って、真剣な眼差しで名字をジッと見つめた。
名字は赤くなって目をそらすとマフラーを首元から取り神威の手と自身の手をグルグルと解けないようキツく巻き付けた。



『はい!これでどこも行けない!だからもう悪戯しないで。分かった?』

「…やっぱり名字は面白いね」



ニコリと満足そうに笑う神威に、名字は前を向いてその手を引いて歩いた。




(神楽ちゃーん、久しぶり!)
(名字!久しぶり…って何でバカ兄貴もついるアル。お前はお呼びじゃないネ。)
(ねえ、殺していい?)



私はどこにもいかないよ。