箱の裏には殴り書きで「嫁に来い」なんてメッセージが書いてあったりする。

「なー、いい加減機嫌なおせって。悪かったよ」

『無理。許さない。』




万事屋にて、いつもは銀時が座っているその椅子に座って名字は両手を組んで床に正座している銀時を冷たい目で見下ろしている。

事件が発生したのは1時間前。
バイトが予定より早く終わった名字は、恋人である銀時に突撃訪問をしようと万事屋へ向かった。部屋の前まで来たところ中からの声が聞こえ耳をすませた。




「やべー。興奮すんなー」

「銀さんここでそんなもの読まないでください。アンタ荷物取りに行くって行ってから1時間もそれ読んでるじゃないですか」

「大丈夫だよ。ぱっつぁん。見終わったらお前にやるから。」

「そういう問題じゃありません、名字さんに言いつけますよ!浮気ですよ!浮気!」

「エロ本で浮気なんざ言うやつぁ、中学生のガキくらいだろ。アイツはエロ本の1冊や2冊で浮気なんて言うような小せえタマじゃねーって」

『小せえタマで悪かったな』

「げっ!!名字?!!!」


そうして名字に顔面を殴られ、現在に至る。新八は気を利かしてか逃げたのかは分からないが既に部屋には居らず銀時は腫れた頬を擦りながら名字に言い訳を始める。



「だーかーら!あれはわざわざ買ったんじゃないって。あの〜ほら、そう!落ちてたの!落し物拾っただけ!銀さん無性に今日いい事したい気分でさ〜」

『人が落としたの拾ったなら警察に届けに行けばいいのに、わざわざ持って帰ってきて中身見たんだ。気持ち悪。人のもの勝手に家持ち帰るのってそれ窃盗じゃないの?ちょっと土方さんに電話して聞いてみるわ』

「ちょっ、たんま!ごめんなさい!ちょっとムラッとして買いました!本当に悪かったって!頼む!この通り!」


土下座をして必死に謝る銀時を見て名字はハァと大きくため息をついた。

確かに浮気した訳では無いし、男子はそういう生き物で、ここのところご無沙汰(お預けしていた)のも事実。ましてや銀時だ。そういう本に手が出るのも無理はないかもしれない。と名字は考えて言葉を発した。




『銀ちゃんも男だしその辺は理解してるつもりだけど、やっぱり目の前にすると浮気された気持ちになる。』

「まあなんだ…色々悪かったよ。もう二度と買わないって約束するから。」

『…私もいきなり殴っちゃってごめん。』


そう言い終えたのを確認すると、銀時は立ち上がって座ったままの名字を抱きしめた。
すると部屋の端からゴホンと咳払いが聞こえた。



「あのー。銀さん荷物持ってきました」

「おー、新八わざわざ取りに行ってくれたのか!ご苦労!ほい。名字」



新八が持ってきたのは、ラッピングを施された小さな箱。その箱のサイズはプロポーズする時に使うあの箱と同じくらいの大きさで名字はドキリとした。

新八もニコリとしながら"この間からずっと悩んでみたいですよ"と名字にコソッと耳打ちをした。




「まあ、そのあれだ。帰ってから開けろよ」

『え、今じゃダメなの?』

「そりゃあ お前、オレだって新八がいたら恥ずかしーだろーが。」

「銀さんも恥ずかしがることあるんですね。大丈夫ですよ、笑ったりしないんで」



銀時と新八のやり取りをよそに、待ちきれなくなった名字は箱のラッピングを解いてプレゼントを開けた。
中には予想してたモノとは違い布製の何かが箱に詰まっていた。それを手に取って広げてみると真っ赤なTバックとブラとは言えない紐状の胸に付けるであろう布が入っていた。

名字と新八はそれを見て無言になる。




『なにこれ?』

「だから恥ずかしいって言っただろ?結構悩んだんだよ〜赤にするか黒にするか。そりゃ銀さんだって好きな女にこういう格好してもらいたいって願望あるよ。とりあえずコレ着てさ今日の夜どう?名字の部屋でさ。最近ご無沙汰だろ?」



そう言いながら、名字の腰にやんわりと手を回す銀時に名字はニコリと笑いかけた。




『指輪じゃねーんかいッッ!!』



ゴンッという大きな音とともに、本日2度目になるパンチを銀時にかまし 名字と新八は万屋を後にした。




(あれ?名字さん、箱の裏に何か書いてありますよ?)
(あれ?ほんとだ……これって)
(ホントに直接口で言えばいいのに、あの人は…)





箱の裏には殴り書きで「嫁に来い」なんてメッセージが書いてあったりする。