今日も彼女は佐々木くんと話していた。
一週間に一度の検診。彼女の大切な仕事。
氷人形と呼ばれる彼女は佐々木くんと話している時が一番、女の子の顔をしていた。
よっぽど嬉しいんだ、彼と話すの。彼と会うのも。


「……ちょっと羨ましいな」
『旧多さん?』
「うわっ!」


ぼんやりとしていたら後ろからまさかの渦中の女の子に声をかけられて。情けのない声を上げてしまった。


『……すみません』
「あ、え!いいんだよ、ごめんね……」


落としてしまった資料をかき集めると彼女も手伝ってくれた。


「ありがとう。ところで珍しいね、君がここへ来るなんて」
『いえ、昨日も来ました』
「え!そうなの?見かけなかったな……」
『……旧多さんにはお会いしてませんね』
「そうだよね!……あ」


これじゃあまるで……。思わず瞼を伏せた。何をやっているんだ、まったく。
無表情なのに、彼女はとても人間らしい。だからどうしても解せない事がある。


「君は憎くはないの?実姉を殺した相手が」
『……憎い』


瞳が揺れたけれど、彼女の口調ははっきりとしていた。意志は固いようだ。


「佐々木くんとはどうして仲良くするの?」
『あなたに関係ない』


思わず。その言葉を聞いて思わず彼女の傍にあった壁を殴っていた。


「どうして?」
『……ササの傍にいたい』
「……キミが?それとも」

『 私達が傍にいたいと思った 』


その時、彼女から二つの声が聴こえて来た。彼女とカノジョの声が。
これだから……興味を失うことこそが有り得ないんだよ。


「君は可愛いよ。本当に」


壁についた手をどけ、君の髪に口づけを贈った。