2015


▽06/08
「理由が、必要ですか」触れもせず。微笑みもせず。「これから先、ずうっと、あなたの味方でいることに」真っ直ぐに、あなたを見つめる。言葉をたくさん知らない私に、感情をそのまま伝える術はないのかもしれないけれど。それでも、確かに、燃える想いがここにあった。

▽06/09
髪の長い子が好きだと思った。違った。それは間違いだった。僕は、髪の長い君が好きだった。それだけだった。君でなければ意味のないことだった。

▽06/12
「あんたにはわかんないわよ!」喚く私に、君は静かに返す。「わからないから聞いている」どうか僕に、君を教えておくれ。場違いな懇願。確かに存在した愛が、私をどこまでも追い詰めた。

▽06/13
「あたし、愛とか恋とか、難しいことはよくわかんないけど、でも」涙混じりの声で、必死に告げる。「でも」その手を両手で握りしめ、震える唇を指先に押し付け。「この気持ちがそうじゃないなら、あたし、一生恋愛なんてできない」

▽06/25
声高らかに宣言する。「私、非常識ガールは、ぶっ飛んだ非常識パンチと非常識キックを駆使し、君の心の壁をぶち壊すことをここに誓います」右手を真っ直ぐ天に向け、太陽をひと突きする気分で。「恋する乙女の力を、舐めないでください!」

▽06/30
「どうして来たの」震える声で問う。「なんで、どうして」私がどんな気持ちで。唇を噛む。「もう、放っておいてよ」俯いた私に、君は困ったように微笑んだ。「どうして、来ないと思うの」

▽07/12
届かぬ、伝わらぬ、ことがわかっていても、それでもなお。僕はここにいる。触れることのできぬ君を守るために、ずっと、ただ、一人で。「今日も愛しているよ」剣を取れ。全ての害悪を。君にたどり着く前に、消し去るんだ。

▽08/01
ふくふくとした、その指が、好き。たくさんのものを生み出す、けれど、大きくない、柔らかいその手が好き。大事なものに触れるときの、優しい、手つきが好き。あたたかい、体温が、好き。小指だけでいいから、握らせて。

▽08/12
その手に、触れる、触れない。寸前で手を引っ込める。君は花火に魅入っていて気付かない。もう一度、伸ばす。どおんという花火の音と、心臓の音が重なる。触れる、触れない。爪がほんの少し、指を引っ掻く。指を絡める。君の驚いた顔。真っ赤な僕の顔は、花火のせい。

▽08/16
君だけは大丈夫だ、なんて、根拠なき言葉。君はたくさんのものに殺されているんだね。

▽08/16
美しいあの子に、私は確かに、嫉妬していたのだった。ただ、強烈に、悔しいと思った。

▽08/16
「私は、隣人を愛さない。世界も救わない。神様も信じない。でも、目の前にいる大切な人は、ぜったい、絶対に、守るんだ!」彼女の声が、言葉が、立ち姿が。誰にも手を差しのべられることのなかった彼女は、地べたを這い、のたうち回り、それでもその全てで、彼女の魂に忠誠を誓うのだった。

▽09/09
好きだと呟いた蕾が膨らんで花咲き、香る。

▽09/11
会える。気持ちの結晶が落ちる。波紋が広がる。揺れる、波が、私を躍らせる。

▽09/13
君が美しいので、僕は生きていられます。

▽09/13
愛を謳え。愛を謳え。二人なら、何処までも行ける!

▽10/24
言えやしないのだ。欲しいだなんて。だって、あなたが決めたの。私はあなたを、求めたりはしないって。だから私は、今日も言葉を飲み込む。あなたの世界を、壊さないために。

▽10/28
心臓が、指先に。震える血管、触れたその感触。神経、電流、熱情の行く末。ああ、大変だ。これが恋というものなのか。

▽10/29
理由もなく落ち込んでいる。理由がないから、改善しない。そうさ、君の。キャンディのような爪を食みたい。卑しい僕を癒してよ。

▽10/30
そう、信仰。それは情熱であり狂った愛であり、君に含まれる神経細胞をすべて破壊してしまいたいような、そういう、そういう気持ち。

▽11/01
夜の底、美しく。冬の海、美しく。凍えた心ひとつ、大層、美しい。

▽11/11
ファンタジー世界に出てくるような雲だった。見渡す限りの、積乱雲。覗く太陽、その透き通った、希望の色をした、光。お祭りなのかもしれない。青の舞台、明るいそこで、今日の主役は雲、雲、雲。曇り天気がどんよりだなんて嘘。爽やかに、晴れやかに、踊る。

▽11/15
深い夜、冷えた空気。灯るあかり、赤い提灯。集う人々、温い息、おでん、熱燗。ばらばらの寒い日、太陽が眠る頃に、こっそりと開かれる集会。広がる熱。それは静かな、静かな、情熱の宴。

▽11/23
僕は君の希望にはなれない。僕は君の、つくしにはなれない。僕はススキだ。風に揺れ、風を揺らすことしかできない。

▽12/02
今は亡き神に、思いを馳せる。

▽12/08
「わからない」と言われるよりも、「わかる」と言われる方が寂しい。側に居る、口実がなくなってしまう。私を知って。あなたを教えて。わからないから、ずっと側に居させて、だ、なんて。

▽12/10
夢が見たい。夢を、見させておくれ。

▽12/13
うつくしの森。愚者の食卓。星のムニエル。月のソテー。

▽12/16
「何故、戦える」僕は問う。「君には関係のない人間だ。他人だ。何故、強くもない君が、そこまでして、危険に身を晒して、身を砕いて」その後ろ姿に、声を投げ掛ける。「何故、守ろうだなんて」途切れた言葉に、君は静かに返した。「死因が『不運』だなんて、あんまりだから」

▽12/16
真実の色をした、真珠のような、しゃぼん玉のような涙が君の頬を伝う。その清らかさといったら。優しさといったら。マシュマロのような頬を濡らして、君は言うのだ。「だって、だって、あなたに恋をしてしまったのです」

▽12/23
雨が淑やかに降るこの喜ばしき日、冷たく濁った空気、静まり返る夜! 壊さぬよう、壊れぬよう、息を殺して踊るのです。さあ、宴を。迫り来る希望の匂いを押し退けて。地に伏した成り損ないの有象無象たちよ、己を主張することなく幸福に舞え!

▽12/31
触れた皮膚が、オブラートのように融けていく。重ねた体が、熱が、混ざり合ってひとつになる。とても、心地が良かった。ああ、このまま。抱きしめ合ってこのまま、今日はふたりだけで眠ろう。明日なんて、来なければいい。






- チョコレートの快楽 -