2020


▽01/04
もうすぐに使いきりそうなクレヨンで、強引に絵を描く。指が染まる。爪と指の隙間にもろもろが詰まって、ぐちゃぐちゃになる。汚くて気持ちが悪い。それでも絵を描く。描く。描く。すべて尽きるまで。力の限り。

▽01/04
美しさを捨てて、どこへゆく? もう生きることすら赦されない醜い身体で、どこへ行こうというのだろう。叶うのならば、次は。君のいない世界に生まれたい。

▽01/15
君の肩越しの朝焼けを覚えている。凪いだ海を覚えている。澄んだ空気を、潮の香りを。覚えている。触れたくて触れられなかった指先。逆光の中の、君の表情だけが、思い出せない。

▽01/25
ああ、ああ。溜め息のような呟きだった。多分それが、最初で最後の愛の言葉だった。

▽01/25
雪が融ける速度よりも、君が腐る速度のほうが、きっと速いね。

▽01/27
貴方のいない天国よりも、貴方がいる地獄がいいわ。灼ける肺も、煮える腸も、熔ける脳も、燃える心臓も。全部ぜんぶ、二人のものよ。

▽02/16
お下がりの幸福と不揃いな失意を抱えて僕たちは沈む。

▽02/17
だって言葉が見つからなかった。呆れたような諦めたような笑みだけが零れた。どうしようもなかった。恋だった。

▽02/27
いっとう美しい女がうっとり微笑んでひっそり囁く、「あなた、」ふっくらした頬をゆっくりと指が撫ぜて、ただ、ただ、こっくりと甘いひとときでした。

▽03/16
全部夢なんじゃないかって思うの。産まれたところから全部悪夢。醜い身体も、乱暴な父親も、愛してくれない母親も、死んでしまった妹も、酷いことしてくる人信じたくない出来事全部全部、夢。私まだ、優しいお母さんのお腹の中で、眠っているだけなの。

▽03/16
全部夢なんじゃないかって思うの。でも私、悪夢から目覚めて幸せな人生を送ったとして、それでもやっぱり、あなたを探してしまうと思うの。

▽03/28
心臓が、きゅうってなるの。きみのことが好きで、たまらないの。

▽03/31
色彩をくれた神様と恋をした私。だけどやっぱり神様じゃ遠いから、側にいてね。

▽04/05
スケジュール帳、紙の上で光る跡。修正テープの跡。思い出になるはずだった未来の跡。虚空の跡地。

▽04/22
愛が傘を突き破って降り注ぐ。愛は僕の体をも切り裂き傷付ける。けれど、僕の体から流れ出たそれもまた、愛だった。





- チョコレートの快楽 -