むに、と柔らかい士郎くんの唇がわたしの唇にくっついて、すぐに離れて行く。キスをするのはもう何度目だかわからないくらいなのに、いつも士郎くんのキスはこうして触れるだけだ。士郎くんとのキスはとても好きだけれど、それが少しだけ不満でわたしは士郎くんの胸元に思い切り抱きついた。
「うわっ!なまえ、いきなりどうしたんだ?」
「あの、士郎くん」
「ん?」
よしよし、と優しくわたしの頭を撫でながら、士郎くんが首を傾げる。その表情は穏やかで、思わずわたしはもごもごと言葉を飲み込んだ。
しかし、言わなければちっとも先には進めない。
わたしは見た目よりもうんとたくましい士郎くんの胸板に顔を埋めて、そおっと心の中の恥ずかしい欲望を吐き出した。勇気を出すんだ、わたし。
「べ、べろで、するやつ……」
「べろ?」
「えっちな、キスが、してみたい……です……」
い、い、言ってしまった。思っていた以上に恥ずかしくて、顔が熱い。士郎くんはどんな顔をしているのか、見たいけれど見たくない。
彼がよくする、困ったような苦笑いをしているかもしれない。もしそうだとしたら、やはり言わなければよかった。
どうしても顔を上げることが出来なくてそのまま胸板に顔を押し付けていると、士郎くんにかすれた声で名前を呼ばれた。
「なぁ、なまえ、顔上げてくれないか?」
「ちょっとはずかしくてむり……」
「あー……その、でもだな、そのままじゃキス出来ないだろ?」
「えっ!?」
思わず顔を上げると、士郎くんのあたたかい両手で顔を包まれる。思っていたより真面目な表情をした士郎くんの顔が近付いて来て、またむに、と唇が重なる。そして熱い舌がぬるりとわたしの口の中に差し込まれた。
思わず体がびくりと跳ねる。まさか、本当にされるなんて。
士郎くんの舌はわたしの舌に絡まって、にゅるにゅると感触を確かめるみたいに動き回る。士郎くんの唾液とわたしの唾液が混ざり合って、麻薬みたいに脳を麻痺させる。どうしよう、気持ちよくてお腹の下の方がきゅうっとする。
もっともっとしていたいのに、士郎くんの舌と唇はとろりと唾液を繋いですぐに離れて行ってしまった。
キスをしていた時間はほんの少しだけだったのに、わたしの息はすっかり上がってしまっている。心臓はどきどきうるさいし、足腰には力が入らない。えっちなキスは、想像していた何倍もえっちで気持ちよかったのだ。
そんなわたしの様子を見て、士郎くんは、ふ、と吐息を漏らしながら優しく自分の指をわたしの指に絡ませた。
「……あんまり可愛いことばっかりしてると、本当に食べちゃうからな」
そう言ってわたしの指を甘噛みする士郎くんの顔が余りにもいやらしくて、頭がくらくらする。士郎くんがこんな顔をするなんて、わたしはちっとも知らなかった。
これ以上、彼を煽ってはいけない。脳みそが警鐘を鳴らしている。わたしは「もう一回して」という言葉を飲み込んで、馬鹿みたいに何度も頷いた。