「わたしもロビンにナンパされたいなぁ」
「ハイ?」
カルデアの廊下でばったり出くわしたなまえが、じっとオレを見つめたかと思えば突然そう言った。かわいい顔でコッチを見つめるものだからてっきり部屋へのお誘いでもあるのかと思ったのだが、それはとんだぬか喜びだったらしい。
訳の分からない言葉の真意を探るべく「わたしもっていうのはどういう事ですかねぇ」となまえの丸い大きな瞳を覗き込む。クソ、今日もかわいいな……。
「こないだの微小特異点にレイシフトした時、ロビン女の子をナンパしてたでしょ?」
「いやいや、ナンパなんてしてねぇですけど?」
「え〜……ほら、なんか現地の女の子捕まえてかっこいい顔で『そこのオネーサン、ちょっとオレと話しません?』なんて言ってたじゃない?」
「それはただの情報収集ってやつでしょうが」
はぁ、と大きなため息を吐いて見せれば、なまえはきょとんとした顔をしてオレを見上げていた。まさかアレをナンパだと思われていたとは。
なまえはオレのこと何だと思ってんですかねぇ。いや、確かにナンパが好きとか前に言いましたけど。言いましたけども。
「あれ、普通に話しかけてただけなんだ」
「そりゃそうでしょうよ。大体、ナンパするならもっと──」
言いかけた言葉を飲み込んで、一歩なまえに近づく。口でアレコレ言うより、身を持って知ってもらった方が早いだろう。そうすればもうあらぬ疑いをかけられる事もなくなるはずだ。
「もっと、なに?」
「いーや、なんでも。……なまえ、さっきオレにナンパされたいって言ってたよな?」
「い、言ったけど……」
不安げに揺れる瞳をじっと見つめながら、オレは一歩、また一歩と距離を詰めてなまえを壁際へと追い詰めた。とん、となまえの華奢な背中が壁にぶつかるのと同時に、オレは壁に片腕をつく。
逃げ場を無くした目の前の獲物の柔らかい頬を、空いた片手でゆっくり撫でる。なめらかな頬が赤く染まったのに気を良くして、オレはにんまりと口の端をつり上げた。
「こんにちは、かわいいお嬢さん。もしお暇でしたらオレとイイコトしません?」
「ひゃ……あの、えっと」
我ながら砂を吐きたくなるくらいの甘ったるい声を出せば、なまえはそれだけでびくりと肩を揺らした。自分からナンパされたい、と言ったくせにしどろもどろになって視線を泳がせている。あーあ、そんなかわいい顔しちゃっていいんですかねぇ。
頬に触れていた手を顎に滑らせて顔を持ち上げ、そのまま小さな唇にキスをする。さすがにここでこれ以上するわけにもいかないので、物欲しそうな半開きの唇を一度だけ舐めてすぐに離れた。
「……お返事は?」
「……はい……」
消え入りそうな声で返事をしたなまえを見下ろし、オレはにんまりと笑った。ナンパは大成功って訳だ。
なまえの顔から手を離し一歩離れようとしたその時、小さな手がオレの服の裾を遠慮がちに握る。
「ん?」
「ロビン、他の女の子にもこういうこと、するの……?」
ハァ〜!? かわいすぎるんですけどぉ!?
眉をハの字に下げて不安げにオレを見上げるなまえの表情は、不安やら羞恥やらに塗れていてものすごくイライラする。いや、ムラムラと言った方が正しいかもしれない。
かわいすぎるなまえの反応に堪らなくなったオレは、どん、と今度は両手を壁について、再びなまえに顔を寄せた。
オレがアンタをどんだけ好きでどんだけ大切にしてるのかっていうのは別に知らなくてもいいが、自分がオレにとってものすごく特別な存在だっていうのはもっと自覚してくれ。
「オレがナンパするのもキスするのも抱きたいと思うのも、なまえだけですよ」
「え、あ……そ、そうなんだぁ……」
オレの言葉を聞いたなまえはボッと音が聞こえそうなくらい真っ赤になり、うれしそうに頬を緩める。
あぁそう、そういう反応しちゃうんだよなぁ、なまえちゃんは。オレは赤面する目の前のなまえを問答無用で抱き上げて、さっさと自室へ向かうことにした。抱く。絶対に抱く。
「ロビン? あの、なにを……」
「ん? ナンパしたかわいい女の子をお持ち帰りしてるんですけど?」
イイコトしてもいいそうなんで、とわざとらしく言えば腕の中のマスターは恥ずかしそうに俯いて、「やさしくしてね」と呟いた。
あ〜も〜! これ以上無いって位にめちゃくちゃ優しくしてやりますよ!