ぽたぽたと落ちる汗にふぅふぅ荒い息遣い。キバナさんが動く度に皮膚の下で伸び縮みする筋肉に、わたしは釘付けになっていた。
キバナさんの引き締まった体はこの日々のトレーニングによって維持されている。スポーツジムでトレーニングをする日もあれば、自宅でトレーニングする日もある。その自宅でのトレーニングの日を、わたしは密かに楽しみにしていた。
何故ならわたしは、キバナさんのふくらはぎがそれはもう大好きだからである。
というわけで、わたしは今日も背中にヌメラを乗せて腕立て伏せに励むキバナさんを、すぐ側のソファで雑誌を読むふりをしながらこっそりと眺めていた。堂々と凝視するのはなんだか失礼な気がするし、なによりも恥ずかしくていつもこうしてバレないように見ているのだ。
ハーフパンツから伸びる長い足にあるぽこんとしたふくらはぎの膨らみは、わたしのそれの倍以上の太さがありそうで見ているだけで胸がドキドキしてしまう。
キバナさんのぱんぱんに張ったふくらはぎ、さわりたいな。

「よし、今日の分終わり! ヌメラ、手伝ってくれてサンキューな」
「ヌメ!」

ふくらはぎにすっかり夢中になっていたわたしは、キバナさんの声に文字通り飛び上がった。慌てて雑誌で顔を隠し、わたしは見てません、という空気を全身から出す。
ヌメラがボールに入る音が聞こえるのと同時に、ぬっとわたしの上に影が落ちてきた。不思議に思って顔を上げると、にんまりと笑ったキバナさんがわたしのことを見下ろしていた。

「それで?」
「へ?」
「なまえちゃんは何でずーっと筋トレしてるオレさまの事、見てたのか教えてくれる? オレさまあんなに見られると照れちゃうんだけど」

首にタオルをかけたキバナさんが、汗を拭きながらそう言った。どう見ても全く照れていなさそうに見えるのは、わたしの気のせいだろうか。

「えっ、あ……みっ、みて、ないっ」
「ふーん?」

見てない、と咄嗟に言ってしまった事を、わたしは一瞬で後悔した。キバナさんがものすごく意地悪な顔をして笑ったからだ。

「雑誌」
「は、はい……」
「逆さまだぜ」
「うそっ」

慌てて手の中の雑誌を確認すれば、キバナさんの言う通り逆さまを向いている。ページに載っているのがマーイーカだからか全然気がつかなかった。なんというベタな間違いを……。どうしよう、恥ずかしい。
思わず逃げようと身じろぎしたその瞬間、キバナさんはわたしの隣にどかりと座ってわたしの動きを静止した。更に長い足をわざとらしくわたしの目の前で組んでみせる。ぱんぱんに張り詰めたふくらはぎが視界に入り、わたしはぎくりと体がこわばらせた。

「オレさまのふくらはぎ、見てたよな?」
「あ……あわ………………はい」
「フフ、そうだよなぁ。なまえはオレさまのふくらはぎのどんなとこが好きなのか教えてくれる?」
「えっと……ふ、太くて、硬くて……あの……たくましくて……」

あれ? なにこれ、ふくらはぎの事を話してるだけなのになんだかものすごく恥ずかしい。顔がかあっと熱くなって、わたしはキバナさんのふくらはぎから視線を逸らした。

「そっかぁ」
「うひゃあっ」

にっこりと笑ったキバナさんが、汗でしっとりとした手のひらで突然わたしのことを抱き上げる。驚いて目を白黒させるわたしを連れて、キバナさんはずんずんと家の中を進んで行った。

「そんなに好きなら、いくらでも見て触っていいぜ。でもオレさま今汗かいてるからさ、シャワー浴びた後でな」

困惑するわたしをあっという間にシャワールームへ連れて来たキバナさんは、汗に濡れたウェアをがばりと脱いでたくましい上半身を露わにした。ふくらはぎに負けないくらい、上半身もたくましくて引き締まっていて、まるで芸術作品のようだ。

「その代わり、オレさまにもなまえの好きなところたくさん触らせてくれる?」
「えっ、あっ!?」
「フフッ、オレさまもなまえの体にだーいすきなところ、いっぱいあるんだぜ」

ニッと目をつり上げて笑ったキバナさんは、当たり前のようにわたしの服に手をかけてそう言った。わたしの服が脱がされるのと、シャワーがざあっと降り注ぐのは同時だった気がする。
この後シャワールームで散々あちこち触られ、ベッドの上でも触られ、なまえの体のあれこれが柔らかくてかわいいだとか、気持ちいいだとか囁かれ、わたしはとろとろになってしまった。
そんなわたしがふくらはぎを触る事ができたのは、結局翌日のことだった。