些細な出来心からの行動だった。隣に座ってアレコレ悪態を吐く直哉くんの脇腹をなんとなくつついてみたら、思いの外反応がよかったのである。大袈裟に体を跳ねさせて、大きな声をあげる直哉くんを見るのは初めてだったかもしれない。
普段見る事の、聞く事のない直哉くんの姿や声にうれしくなってしまったわたしは、こちょこちょとそのまま直哉くんの脇腹をくすぐった。

「えいえい」
「ちょ、突然何しとんねん! うははは、コラ……っはは、なまえやめぇ!」
「聞こえませーん」
「ふっ、はは、クソが……やめろ言うて……っははは」

笑い過ぎて目に涙を浮かべながら畳の上を転がる直哉くんの脇腹を、わたしはこちょこちょとしつこくくすぐり続ける。いつも飄々としている直哉くんが、こんな風にわたしの好きにされているのは初めての事だ。直哉くんの言葉にも、いつもの様な恐ろしさは微塵もなかった。だからつい、調子に乗ってしまった。

「ふふ、直哉くんかわいい」
「っ、この、えぇ加減にせえよ……っ」
「へ?」

ぐい、とものすごい力で腕を掴まれたと思ったその瞬間、床に転がっていたはずの直哉くんが息を切らしながらわたしを見下ろしていた。いつの間にかわたしの方が床に転がり、よく手入れされた綺麗な畳に腕を押し付けられている。
今更ながら調子に乗ってしまった事への後悔が全身に広がっていった。わぁ、直哉くんの顔、すごくこわい。

「よくもまぁ散々くすぐり回してくれたなぁ?」
「つい……直哉くんが笑ってるの、かわいくて……えへへ……」

誤魔化すように笑いながらそう言うと、直哉くんは「は? かわいい?」と眉間にシワを寄せる。
あ、火に油を注いでしまったかもしれない。
直哉くんは普段から男を立てろ、女は男の三歩後ろを歩け、なんてことをよく口にしている。そんな直哉くん相手に、わたしはとんでもないことをしてしまった。
さーっと青ざめるわたしの顔をがしりと掴んだ直哉くんは、取ってつけたような薄っぺらい笑顔をこちらに向けて「かわいいのは誰なんか教えてあげよか」と腕に力を込めた。




♡   ♡   ♡




「あーあー、なまえのせいで俺の指すっかりふやけてしもたわ」

軽い調子でそう言いながらも、直哉くんは指を動かすのを止めてくれなかった。親指でぐりぐりとクリトリスを押し潰しながら人差し指と中指で中をいじめられる。
直哉くんが少し指を動かすだけでぐちゅぐちゅと卑猥な音がなり、わたしの口からは大きな喘ぎ声が溢れた。直哉くんの服は一切乱れていないのに、わたしだけが裸になって畳の上でぐずぐずになっている。

「も、やめ……っ♡ひぐっ♡♡」
「聞こえへんなぁ」
「やらぁっ♡そこ、ぉ゛♡あっ♡あ゛♡」

さっきの仕返し、と言わんばかりに白々しく聞こえないふりをする直哉くんは、わたしの弱いところをぐぽぐぽと指で刺激した。
がくがくと足が震え、今すぐにでもイってしまいそうだ。強すぎる快感に頭の中で脳みそが揺れているような気さえする。

「な、なおやくんっ♡ごめ、ごめんなさいっ♡」
「何がごめんなさいなんか言うてみ」
「それは、あ゛っ♡あ〜っ♡♡」
「ははっ、喘いでばっかじゃわからんよ?」

すっかり上機嫌な直哉くんは、いつの間にか薄っぺらい笑顔ではなく楽しそうなニヤニヤ笑いを浮かべていた。
指の動きを早くされれば、もう抗いようのない絶頂感に襲われる。もう目の前のすさまじい快感の事しか考えられなくて、うまく言葉が出てこない。どうしよう、また気持ちいいのがきちゃう。

「あっ♡らめ♡も、イっちゃう♡♡イくっ♡♡」
「あぁ、『すぐイく淫乱でごめんなさい』いうこと? ええよ、俺優しいから許したるわ。ほら、イってええで。……イけ、淫乱」
「やっ♡らめ♡らめぇ゛っ♡♡♡」

直哉くんの言葉と同時に、おまんこがきゅうきゅう収縮して本当にイってしまった。強すぎる快感に全身がびくびく震えてしまう。
淫乱、なんて言われて感じてしまうこの体が恨めしい。大体わたしの体をこんな風にしたのは直哉くんなのに。そう言いたくても、快感でとろけたわたしの口から出るのははぁはぁと荒い呼吸の音だけだった。

「顔、涙と涎でぐっちゃぐちゃやん」
「ふあ……♡あ……♡」
「こーんなぐっちゃぐちゃな顔にキスしてあげんの、俺くらいやろなぁ」
「ん、んん♡ふ、ぅ♡」

ぬぽ、とおまんこから指を引き抜いた直哉くんは、そのべとべとの指でわたしの顔を押さえ少し乱暴にキスをした。
直哉くんはぐちゅぐちゅと音を立てながら舌を絡ませ、唾液を流し込んでくる。それに必死に応えれば、直哉くんは唇を離してわたしを見下ろした。興奮のせいか、直哉くんの頬が少し赤いように見える。

「なんやなまえちゃんはありがとうございますも言えへんの?」
「はひ……♡なおやくん♡ありがとう、ございまひゅ♡」

素直にそう言えば、直哉くんはふん、と満足げに鼻を鳴らしてまたすぐに唇を重ねた。わたしの顔を押さえつけていた手が、するりとわたしの手に伸ばされる。ゆっくりと指が絡まるその感覚に、わたしはどうしようもなくうれしくなってしまうのだった。