なまえの細く小さな手に握られたスマホに、生まれたばかりであろうエレズンがポケじゃらしにじゃれながらよちよちと歩く姿が映し出されている。
おれの隣に座り、ソファの背もたれではなくこちらに少しもたれるようにして熱心に画面を見つめるかわいい恋人はエレズンの一挙一動に合わせてきゃあきゃあと声を上げた。
「ものすごく可愛い動画があるから一緒に見てほしい」とうちに来て早々にうれしそうに笑っていたが、はしゃぐなまえの姿はおれにとってはエレズンよりもずっと愛らしい。
「おまえの方が可愛いですよ」なんて言うのは少々ベタすぎるだろうか。そんなことを考えながらスマホの画面となまえの愛らしい横顔を眺めていると、数分の短い動画はあっという間に終わってしまった。
「エレズンかわいかったねぇ!」
「ええ、うちのストリンダーの小さい頃を思い出しました」
笑いながらそう答えると、なまえはうれしそうにおれの顔を見上げる。そしてすぐにまたスマホに視線を戻し、慣れた様子で画面の動画アプリを操作した。最近はベビーポケモンの動画を見るのにハマっている、となまえが数日前に話していたのを思い出しながらおれはなまえの指先を眺めた。
「色んなポケモンのかわいい動画があるんだけど、ネズさんはどれが見たい?」
「へぇ……ホントに色々あるね」
するすると動く指に合わせて画面が次々に移り変わる。そうしていくつかの動画を見ているうちに、突然その動画は始まった。
『あっ♡あっ♡ご主人様ぁ♡』
ポケモンの鳴き声とはかけ離れた女のわざとらしい喘ぎ声がスマホのスピーカーからきんきんと響く。ベビーポケモンの動画を見ていたはずなのに、一体何故AVが突如紛れ込んできたのか。
反射的になまえの顔を見れば、なまえは頬を上気させてスマホの画面に釘付けになっていた。
いつものなまえならこういう類のものは恥ずかしがってすぐに消してしまうはずだった。そうしないという事は、恥ずかしさよりも興味が上回っているという事だろう。
──ふぅん、こういうのがねぇ。
無意識にニィっと口の端がつり上がる。なまえが夢中になっている動画はいわゆるソフトSMと呼ばれるジャンルのAVだ。
チープなコスプレ衣装に身を包んだ女優が四肢をいかにもな拘束具で拘束されて『ご主人様』に様々な道具で責められている。作ったやつの正気を疑うクソだせぇBGMと演技がかった女優の喘ぎ声はノイジーだが、プレイ内容は中々興味深い。なまえがこれを見て興奮してるとなれば尚更だ。
「なまえはこういうのに興味があるんですか?」
「へっ!? えっ、あ! いや、えっと……」
おれが声をかけると、なまえは赤い顔をもっと赤くしてしどろもどろになってこちらを見た。ばちりとおれと視線が合うと、大きな瞳にうるうると涙が溜まっていく。つやつやとした唇は言葉を失ってしまったらしく、ぱくぱくと無意味に動かされていた。
「ずいぶん熱心に見てるから、この動画みたいなことおれにされたいのかと」
違った? と腰に手を回すと、なまえの細い肩が大げさに跳ねる。黙ったままの顔を覗き込んで、返事を促すように名前を呼ぶ。
今ものすごくいやらしい顔をしてること、きっと自分では気付いていないんだろうね。
「ち、ちがわ、ない……です……」
消え入りそうなその小さな声は少し震えていた。そうしてなまえはちらりと手の中のスマホを見て、やっと慌てて動画の再生を止める。さっきまで夢中になっていたくせに、今では恥ずかしくてたまらないらしい。
妙なBGMと女優の喘ぎ声が消えて静かになった室内では、おれたち二人の少し荒い呼吸の音がやけに大きく聞こえた。
「じゃあ、試してみますか」
「……え?」
大きな瞳を更に大きくするなまえをよそに、おれは自分の腰からさっさとベルトを抜き取った。動画に出てきたような拘束具はあいにく持ち合わせていないが、これでも充分代用はできる。
期待と困惑をぐちゃぐちゃに混ぜたみたいな顔をしたなまえの腕を掴んで、ベルトをぐるりと巻き付ける。細い両腕は数分もかからず、あっけなくベルトで拘束出来た。そしてなまえの手に握られたままのスマホを取り、ローテーブルの上に置く。
そのまま軽く肩を押せば、なまえは簡単にソファに倒れ込んだ。その拍子にスカートがめくれ上がり、柔らかな太ももが露わになる。滑らかな太ももには、数日前おれが付けたキスマークが未だうっすらと残っていた。
「もう、おれが解かないと自分じゃ両手を自由に出来ないね」
「……っ、ネズ、さ……」
「このままさっきの動画みたいに、イきまくって漏らすまでまんこ可愛がってやりましょうか」
動画の女優のアレは演技だろうが、こっちは本気だ。おれを見上げるなまえの表情は、完全に雌の顔をしている。チンコがイライラしてくるのを感じながら、太ももに残る痕を指でなぞった。
「さぁ、返事は?」
指をつう、と内腿、その奥へと滑らせながら問いかけると、甘ったるい悲鳴が小さく上がる。きっとおれは今あくタイプ遣いに相応しい顔で笑ってるんだろう。
おれも存外、こういうのが好きらしい。