妙な寝苦しさを感じてわたしは眠りから目を覚ました。あまりの眠気に一度目を開いた後もまたすぐに目を閉じてしまう。昨日寝たのが遅かったから、まだまだ眠いのだ。寝ぼけたままの頭で寝苦しさの正体を探してみると、その原因はわたしの体に抱き付く四本の腕が原因の様だった。
……よんほん?
わたしは昨夜いつものようにキバナさんと二人でベッドで眠ったはずだ。それなのに、なんで腕が四本? 一体誰の腕だろう。
そろそろと目を開けば目の前にはキバナさんが居て、わたしを抱きしめる腕の二本は間違いなくキバナさんであるとわかった。残り二本の腕の出どころを確かめようとそろそろと後ろを振り向く。
——するとそこにも、キバナさんの顔があった。
「なっ、あ!? ええっ!?」
「んー……」
思わず大きな声を出すと、わたしを挟む二人のキバナさんがもぞもぞと身じろぎする。なんで、キバナさんが二人? わたしがあわあわと二人を見比べていると、パチリと目の前のキバナさんの瞼が開いた。
「あれ、なまえもう起きてんの? おはよ」
「んー? 今の、誰の声だ……?」
どちらのキバナさんも目を覚まし、わたしと、もう一人の自分の姿を確認する。わたしを間に挟んだままぺたぺたとお互い顔を触り合った後、一拍置いて二人のキバナさんは叫び声を部屋に響かせた。
♡ ♡ ♡
「なるほど。なまえの目が覚めたらオレさまが二人になってたんだな?」
「オレさまもそっちのオレさまも、意識と記憶がはっきりしてるしメタモンでも無い」
「そういうことみたいです……」
「まぁ、オレさまが二人いるからって別に困ること無いしな」
キバナさん達は意外なことにすぐに落ち着きを取り戻し、ベッドに座って状況の整理を始めた。ちなみに見た目が全く同じなので、見分けがつくように片方のキバナさんは髪を結んでもらい、もう片方のキバナさんは髪を下ろしてもらっている。
それにしてもさすがガラルのトップジムリーダー。どんな問題にも冷静に対処できるなんてすごい。わたしはというと、まだ頭が混乱しっぱなしでキバナさん二人に挟まれているというこの状況に心臓がどうにかなりそうだった。
「あの、二人とも……」
「ん?」
「なーに」
「とりあえず、服を着ませんか……」
そう、二人とも裸のままだったのだ。昨夜えっちしてそのまま寝たせいでみんな裸のままである。服を着るタイミングを失った私はベッドシーツにくるまって二人の話し合いを聞いていた。
わたしの言葉を聞いたキバナさん達はパチリと二人で目を合わせた後、ニィッと笑ってわたしのことを抱き締める。たくましい四本の腕の感触に、ぶわっと全身から汗が噴き出た。
「あわわわわわ」
「なまえから見て、オレさまたちどっちが本物だと思うか教えてくんない?」
「あぁ、どっちも本物っていうのももちろんアリだぜ」
「ひゃわ……わ、わかりません……っ」
左右からキバナさんの声がして、顔が熱くてたまらない。二人のキバナさんの声は少し違っていて、話し方も少し違う気がする。だけれど不思議なことに、どちらもわたしの記憶の中のキバナさんなのだ。
「フフッ、とりあえずせっかくオレさまが二人になったんだし、今しか出来ないことやろうぜ」
「いましかできないこと……?」
「おっ、さすがオレさま! やっぱり思考も同じなんだな。話が早いぜ」
「キバナさん?」
にやにやと笑ったキバナさんの顔が左右から近付いてくる。元々早かった鼓動は更に早くなり、もう死んでしまいそうだ。世界一かっこいい顔が目の前に二つもある。なにこれ、夢?
髪を結んだ方のキバナさんに顎を引かれ、優しく唇を重ねられる。ぬるりと入り込んでくる舌の動きや唇の感触、流し込まれる唾液もすべていつものキバナさんと同じで、体がぴくぴく反応してしまう。
「ふぁ……♡」
「なまえ、次はコッチ」
「んう♡んっ♡」
もう一人のキバナさんにもキスをされ、口内を遠慮なく責められる。このキスも間違いなくキバナさんのキスで、お腹の奥がじんじんした。
舌と舌を擦り合わせて上顎をくすぐられると、わたしはあっという間にメロメロになってしまう。自分でもとろとろの顔をしているのがわかる程だ。
「かわい……♡」
「ん、ぁ♡きばなひゃん♡なんでぇ……♡」
「なまえのだーいすきなキバナさま二人と、えっちしたくねぇ?」
困惑するわたしをよそに、キバナさん二人は楽しそうに笑っている。するすると体を滑る二つの大きな手のひらに、わたしはぶるぶると首を振った。キバナさん二人とのえっちなんて、絶対無理だ。色んな意味でしんでしまう。
「だめ、だめですっ」
「なんで?」
「だって、その、はずかし……あっ♡」
「恥ずかしいの、好きなくせに」
「あっ♡んっ♡やあ♡」
二人の手は胸や太ももを撫でまわし、わたしの体を翻弄する。昨晩散々可愛がられた体は熱を取り戻すのもあっという間で、気がつけばわたしの頭の中はえっちなことへの期待でいっぱいになってしまっていた。
「オレたちと三人でえっち、する?」
「……なまえがどうしても嫌ならしないから教えて」
二人のキバナさんに焦らすように体を触られながらそう聞かれ、わたしはびくびくと腰を震わせた。
「す、するっ♡三人でえっち、します♡♡」
キバナさんに弱いわたしがキバナさん二人に言い寄られて断れる訳がなかった。わたしの返答を聞いたキバナさんたちは上機嫌に笑うと、甘ったるい声でそれぞれわたしへの愛を囁いたのだった。