「ミハイさぁん!」とわたしが泣き声をあげても、ミハイさんはわたしをチラリとも見ず、モニターを見つめたままガチャガチャとコントローラーを操作していた。
半泣きのわたしの手の中にあるのは、わたしのスマホだ。どういうわけだか今朝起きたらスマホが完全におかしくなってしまっていた。
画面は待ち受けにしていたミハイさんの顔のまま、いくら触っても無反応。電源を入れ直しても解決せず、着信もできなければメールもSNSもソシャゲも出来ない。
隠神さんにスマホの不調を訴えれば「ミハイに言ってくれ」の一点張り。このままでは仕事にもならないし、最近ハマって織くんとやっていたソシャゲもできない。

「ミハイさん、わたしのスマホ直せませんか?」
「私は今忙しい。仲間達と限定のイベントクエスト中だ」
「そんなぁ……」
「水」
「あ、ハイ」

染み付いた給仕係の習性とは恐ろしい。水と指示された瞬間、わたしはスマホを床に置いてペットボトルの蓋を開けた。
ミハイさんに「どうぞ」と差し出せば「ごくろう」とモニターから目を離さないまま受け取られる。水を飲み終えたミハイさんからペットボトルを受け取って、蓋を閉めて、わたしは再度スマホを手に取った。
相変わらずわたしのスマホはミハイさんのきれいな顔を映したまま動かない。このままスマホが直らなくて中のデータが飛んだらどうしよう。わたしの撮ったミハイさんの写真や動画が消えてしまう。ミハイさんの機嫌のいい時に撮ったツーショットだってあるのに。
そう考えたらどんどん悲しくなってきて、わたしはゲームに励むミハイさんの足に縋って再びぐずぐずと泣き声をあげた。

「ミハイさぁん……スマホ直してくださいぃ」
「…………」

無視されてる。そう思うと余計に悲しくてわたしはミハイさんのグレーのスウェットをぎゅうっと握りしめて、その硬い足に抱きついた。

「うぅ……ミハイさん大好き……ミハイさんしか頼れないんですぅ……この、このまま中のデータが消えちゃったら、ぐすっ、ミハイさんとの、ツ、ツーショット写真消えちゃうぅ……!」

わーん!と子供みたいな泣き声をあげれば、ふいにミハイさんは椅子をくるりと回して体の向きを変えた。足にしがみついていたわたしは当然振り回されて、ぐしゃりと無様に床に転がる。背中が痛い。

「うぎゃっ」
「クエストが終わった。貸せ」
「……!はいっ!」

優しい!一気に涙が引っ込んだわたしは、大慌てでスマホをミハイさんに差し出した。ミハイさんはほんの十数秒、パソコンとスマホを繋いで何か操作をするとすぐにスマホを投げてよこした。

「戻ったぞ」
「えっ、も、もう!?」

受け取ったスマホを確認すると、すっかり元通りになっていた。中のデータもきちんと残っている。さすがミハイさんだ。

「すごい!ありがとうございます、ミハイさん!」
「当たり前だろう。ソレをやったのは私だ」
「え?」

ミハイさんがわたしのスマホを?なんのために?
考えても答えは見つからなくて、わたしはただただ目の前のミハイさんのかっこいい顔を見つめていた。

「貴様、私のげ……恋人を自称している癖に昨日私の事を無視しただろう。その罰だ」
「無視しましたか!?」
「した。ソシャゲに夢中で気がついていなかった様だったな」

サーッと顔から血の気が引いていく。わたしがミハイさんの声を聞き逃すなんて、給仕係をクビになってしまうかもしれない。絶対絶対絶対にもうソシャゲは引退しよう、と固く心に誓った。
すると、ミハイさんは足をつつ、とわたしの体に滑らせてニンマリと笑ってみせる。これは人の土下座だとか、困ってる姿だとかを見た時と同じ顔だ。

「しかし、先程の泣き声はなかなか良かったぞ。私に縋るしかないメソメソとした泣き声、それとスマホを直したい理由がソシャゲではなく私という点も気に入った」

ミハイさんの綺麗な脚が、わたしの首、胸、お腹、とするする降りていく。わたしはミハイさんの楽しそうな顔から目が離せなくて、ミハイさんを見つめたままふうふうと呼吸を浅くしていた。

「ひ、あ、ミハイさん……っ」
「喜べなまえ、私は機嫌がいい。スマホを直した上、更に少しの褒美をやる」
「っ、あ……♡」

くっとミハイさんの足がわたしの股間を押す。それだけでもわたしの全身は悦んで、びくびくと小さく震えてしまった。

「先程の泣き声のように私を楽しませてみろ、下僕」

ミハイさんの足が器用にぐりゅ、とわたしのクリトリスを押し潰し、わたしは一際大きな声で鳴いた。