「おかえり」

買い物袋を下げてこっそりゆっくりと自室へと向かうわたしの肩に手を置いて、傑くんはにっこりと笑いながらそう言った。一番見つかりたくなかった人物に見つかってしまった事実に「ただいま」と応える声が思わず裏返る。
傑くんが近づいてくる足音はもちろん、気配も何も感じなかったのに。わたしが思わず後ろ手に買い物袋を隠していると、傑くんは懐から出した除菌スプレーをわたしに吹きかけながら、今度は眉を下げて困ったように笑った。
傑くんは今まで信者の人の相手をしていたのか、少し濡れた袈裟からは無機質な除菌スプレーの匂いがする。

「なまえ、どこに行ってたんだい? 何も言わずにどこかへ消えてしまうのはやめてほしいな」

心配するだろう、とスプレーをまた懐へ戻しながら傑くんはそう言った。その優しくも切ない表情に胸がちくりと痛む。

「……ごめんなさい」
「うん、いいよ」

素直に謝れば傑くんはまたにっこりと笑って、わたしの腰を抱き寄せて歩き始めた。この買い物袋の中身を見られたくなかっただけで、傑くんのことを心配させるつもりは全くなかったのだけれど、なんだか悪いことしちゃったな。

「ところで、その袋には何が入ってるのかな?」
「えっ」

ぎくり、と顔をこわばらせるわたしのことを見下ろして、傑くんはいつも通りの優しい声色で話を続けた。

「私に内緒でこっそり買いに行かなきゃいけないものが何なのか、教えてくれる?」
「そ、それは……あの……」
「あぁ、続きはなまえの部屋の中で聞かせてもらおうか」

ギィッと木造の廊下が軋んで、傑くんが当たり前のようにわたしの自室の戸を開く。純和風の室内には傑くんの揃えたセンスのいい家具がいつも通りに並んでいる。
布団は嫌だ、ベッドで寝たい、というわたしの我儘を叶えるべく置かれた和風のローベッドに腰掛けた傑くんは「おいで」とベッドシーツに手を置いた。
ちなみに日頃わたしは傑くんの部屋で寝ることが多い為、このベッドの使用率はあまり高くない。

「……ピアッサーを、買ったの」
「ピアッサー?」

傑くんに誘われるままベッドに座ったわたしは、腹を括ってそう答えた。自分でピアスホールを開けるための、千円位で買えるあのピアッサーだ。
そろそろと買い物袋から二つのピアッサーを取りだして見せれば、傑くんはきょとんとしてわたしの手の中を見る。それから視線をわたしの耳へと移して、ごつごつした指でわたしの耳たぶを撫でた。
耳を触られるのはなんだかくすぐったくて、わたしは少しだけ身を捩る。もっとも、傑くんはそれでわたしの耳を触るのを止めたりはしないのだけれど。

「なまえ、耳に穴あけるのかい?」
「そのつもり……です……」
「ふぅん、それなら私が開けてあげるよ」
「えっ! いや、それは……」

やはりこうなってしまった。傑くんにバレたら、絶対に自分がやると言って聞かないと思ったから隠したかったのだ。
はっきり返答をしないでもごもごと言葉を濁すわたしをよそに、傑くんはわたしの手の中からピアッサーを奪い取った。そして早くもそのパッケージをべりべりとこじ開け始めている。

「大丈夫だよ。ホラ、私も最初はピアッサーで開けたんだ。だから慣れたものさ」
「それって、人の耳に開けるのは初めてってこと?」
「……いや、それもやった事あるよ」

そう言った傑くんは、少し眉を下げてわたしを見た。その表情は高専でよく見たあの表情で、わたしは思わずわたしの耳に触れる傑くんの手に自分の手を重ねた。
これはちょっと、余計なことを聞いてしまったかもしれない。昔のことを傑くんに思い出させてしまったかも。高専で過ごした、あの時のことを。

「傑くん、あの……」
「何か、なまえは私にされたくない理由があるのかな?」

話を逸らそうと口を開いたわたしを遮って、傑くんはそう言った。どうやら過去を思い出してアンニュイになったのはほんの一瞬だったのか、すでに傑くんはいつもの調子に戻っていた。
スッと目を細めた傑くんの視線に射抜かれて、わたしはびくりと肩を揺らす。
正直なところ、わたしは呪術師の端くれでありながらものすごく怖がりだ。ビビりだとか、チキンだとか言ってもいいかもしれない。痛いこと、怖いことは出来るだけしたくない。
周りのみんなが思春期にピアッサーや安全ピンで耳に穴を開けて、ピアスを付け始めていたあの頃、わたしがピアスに手を出さなかったのもそのせいだ。
だから出来たら美々子ちゃんや菜々子ちゃんに手伝ってもらいながら、自分のペースでゆっくりピアッサーを使いたかった。氷で冷やすと感覚が無くなって痛くないとか聞いたことがあるし、とにかく痛くない、怖くないようにと全力を注ぎたかったのだ。
サドである傑くんに任せたら、絶対に何かよからぬ楽しみ方をされるに決まっている。
しかしこんな事を馬鹿正直に傑くんに言えばそれこそひどい目に合う。わたしは覚悟を決め、緩慢な動きでこくりと一度頷いたのだった。

「……よろしくお願いします……」
「うん、任せて」

そう言った傑くんに何故だかベッドにどさりと押し倒され、唇を重ねられる。ぬるりと押し込まれる舌に驚いて身じろぎすれば、更に深く舌を差し込まれた。
ピアッサーを使うはずじゃ? と困惑するわたしを無視して、傑くんは大きな手のひらをわたしの内腿に滑らせる。くちゅくちゅと舌を絡ませながら際どいところを撫で回されれば、傑くんにしつけられたわたしの体はすぐその気になってしまう。
傑くんは一体今から、何をするつもりなのだろう。




 ♡   ♡   ♡




「あっ♡♡しゅぐるくんっ♡も、やらあっ♡」

ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てながら、傑くんがわたしのクリトリスをしつこくこね回している。更にはそれに合わせておまんこの浅いところをちゅこちゅことほじられて、その度に愛液がだらだらと溢れていた。
傑くんが指を動かすのに合わせて腰がびくびく跳ねて、頭の中をかき混ぜられている様なすさまじい快感に襲われる。

「イく……っ♡も、イきまひゅ♡♡」

わたしがぐずぐずと泣きながらそう訴えて、絶頂を迎えようとすると傑くんは途端にぴたりと手を動かすのを止めてしまった。イきそびれたおまんこは切なげに震え、わたしはぶるぶると首を振った。
ひどいことに、イかせてもらえなかったのはこれが初めてではない。もう何度目かわからない寸止めを繰り返され、わたしは頭がおかしくなりそうだった。
クリトリスは絶頂を求めてパンパンに膨らんでいて、すっかり皮もむけてしまっている。ベッドはイきそびれたおまんこから溢れる愛液でぐしょぐしょ、わたしの顔は涙や鼻水でべとべとだ。

「あぁ、またイきそう? ダメだよ。ほら、なまえ我慢して」
「やだぁっ♡も、イきたいっ♡おまんこイかせてくだひゃい♡♡」
「ん、もう限界?」

涼やかな声でわたしに問いかける傑くんに、必死になって何度も頷いた。なんでこんな事になってるのか理解できないままに快感を与えられては焦らされて、もう思考も感情もぐちゃぐちゃだ。

「じゃあ、あと少しだけ頑張ろうか。そしたら好きなだけイかせてあげるよ。……頑張れるね?」
「あ……はひ……♡」

有無を言わさない傑くんの雰囲気に気圧されて、わたしはまた頷いた。「なまえはいいこだね」と囁かれ、それだけでも子宮がきゅうっとする。早く傑くんに気持ちよくしてほしい。それで頭がいっぱいだった。
とっくに服も下着も脱がされて裸になっているわたしとは正反対に、傑くんはいつもと変わりない姿のままだ。
袈裟も外さずにわたしを散々いじめた傑くんは、わたしのせいでぐっしょりと濡れた指のまま鬱陶しそうに自分の法衣を乱していく。本物のお坊さんがこの法衣の扱いを見たらきっと卒倒するだろう。
傑くんはガチガチに勃起したたくましいおちんちんを取り出し、それをわたしのおまんこに押し付けると、ふっと笑いながらわたしを見下ろした。

「まだイっちゃダメだよ」
「え、あっ♡らめぇ♡イ゛っ♡イっちゃ、ひう♡」

わたしの言葉の途中でぐぷ、とおちんちんを押し込んだ傑くんはそのまま無遠慮にずぷずぷとおちんちんを押し進めていく。中を傑くんの形に押し広げられる感覚に肌が粟立ち、ぞくぞくしたものが身体中に走っていく。
イっちゃだめ、イっちゃだめ、と頭の中で何度も繰り返して、迫り来る絶頂感に歯をガチガチ鳴らしながら耐える。傑くんからの命令はわたしにとっては絶対なのだ。
おちんちんを根元まで挿れた傑くんは、ぶるぶる震えながら快感に耐えるわたしを見ると、満足そうに笑った。

「すごい、よく我慢できたね。えらいえらい」

ふーっ♡ふーっ♡とはしたない呼吸を繰り返すわたしの耳に触れながら、傑くんは夜空みたいな真っ黒な瞳でわたしのことを見つめる。

「イっていいよ、なまえ」
「ありが、っ————♡♡♡」

お礼を言おうとしたその瞬間、耳の側でガチャン、と音がして耳たぶにじぃんとした痛みが走る。それと同時にわたしのおまんこはびくびく大きく脈打って傑くんのおちんちんを締め付けていた。
脳みそが焼き切れるみたいな強烈な快感に目の前がチカチカして腰が勝手にがくがく震える。痛い、痛いのに、気持ちいい。何これ。
今のこの体験がなんなのか訳がわからなくて混乱するわたしを、傑くんはひどく楽しそうに見ていた。

「あ゛っ♡な、なにぃ……っ♡」
「私のチンポ咥え込みながら耳に穴開けられるの、気持ちいいね?」

傑くんはひらひらとわたしにもう一つのピアッサーを見せつけて、反対の耳にカチャリとそれを構える。
そういえばわたし、傑くんにピアスホールを開けてもらうんだった。やっとその事を思い出し、ぶわっと全身から汗が吹き出す。
また痛いのがくる、という恐怖心ととてつもない快感、それからピアッサーでイってしまったという羞恥心がごちゃ混ぜになって、またおまんこがひくひくと痙攣した。

「ほら、マゾアクメに夢中になるのはいいけど、動くとずれてしまうよ」
「やぁ♡みみ、やめ……っ♡」
「そんな顔されて、止められる訳が無いだろう?」
「やらぁ♡それ、こわ、イ゛っ…………っ♡♡♡」

うっとりと話した傑くんは、あっけなくピアッサーを握ってまたわたしの耳に針を貫通させた。先程と同じガチャン、という恐ろしい音が鼓膜を揺らし、慣れることのない痛みが体をこわばらせる。
いっそ、痛いだけならよかったのに。
わたしの体は再び絶頂を迎え、使用済みのピアッサーをポイ、と放る傑くんの下でどろどろになって快感に震えていた。じんじんとした耳の痛みが、お腹の奥に響く。

「うん、かわいい。よく似合ってる」
「あっ♡ありがと、ございまひゅ♡♡」

じわじわと痛む両耳の外側を指でなぞった傑くんは、ぺろりと唇を舐めながらゆるゆると腰を動かし始めた。
イったばかりのおまんこには緩慢な動きでも刺激が強くて、わたしは悲鳴のような声をあげてしまう。さっきまであんなにイきたかったのに、今はイくのがこわいくらいだった。
痛みと快感でぐずぐずになったわたしのことを見下ろすその表情はひどく興奮していて、その顔を見るだけでもわたしの体はぴくぴくと反応してしまう。わたしのこといじめて興奮してる傑くんは、世界一かっこいい。

「めちゃくちゃに犯してやりたい気分だな」

そう呟いたのを合図に激しく腰を打ち付けられて、わたしは傑くんの広い背中にしがみついた。どちゅっ♡どちゅっ♡とすごい音をたてながら傑くんはわたしの膣内を懐柔していく。
あまりの気持ちよさにもう何も考えられなくて、大声で喘ぐことしかできなかった。
中の弱いところばかりを狙って腰を動かされ、すぐにまたぞくぞくとした絶頂感が襲ってくる。大きな体に半ば押しつぶされるような体勢は、傑くんの心臓の音さえ伝わってきそうだった。

「ひあっ♡あ゛っ♡しゅぐる、く……っ♡♡」
「なまえ、私の目を見て」

ぐらぐら揺れる視界で傑くんのことを見れば、ギラギラした瞳がわたしのことだけを見つめていた。噛み付くように唇を重ねられ、傑くんが中途半端に着たままの法衣が肌に当たる。
じんじんと痛む耳が、ひどく熱い。