「それにしてもわしも増えたの〜。水着のわしにアヴェンジャーのわしじゃろ?それからやけに歌舞いとるわしに色々とでかいわし。うーむ、わしってば流石大人気サーヴァント。アーチャーであるこのわしも含めればなんと五人!……ちびノブとかいうあのようわからん生き物も含めるともっとじゃが……まぁ、あれは含めんでもよいか」

ボイラー室横のいつもの部屋でノッブと二人でお茶を飲みながら話をしていると、ノッブがふとそんな話をし始めた。
そう言われてみれば確かにノッブも随分増えたものだ。アルトリアたちやエリちゃんズにはさすがにまだ及ばないけれど、ノッブならいつかそれくらい増えてしまいそうな気さえする。カルデアって本当にすごいところだ。
まぁ、ノッブのことが大好きなわたしからしてみれば、ノッブがたくさんいるというのはとても幸せな事だけれど。

「そんでもってお主、やたらとどのわしとも仲良くしておるのう。昨日は水着のわし、その前はでっかいわし、じゃったか」
「えっ、あっ、見てたの?」
「わしに知らぬ事など無いわ」

どのノッブもノッブなのだから、やましく思う必要はないはずなのにどうしてこうも後ろめたく感じてしまうのだろう。
わたしは何と答えたらいいのかわからなくて、もじもじと手元のみかんを眺めていた。……ノッブ、もしかして怒ってるのかな。
すると、急にノッブがスッと静かに立ち上がった。慌ててわたしが顔を上げると同時に、ノッブにがしりと胸ぐらを掴まれる。突然のことに硬直するわたしをぎろりと見下ろして、ノッブはゆっくりと口を開いた。

「よく聞け、なまえ。どれもわしの別霊基であるが故に特別に目溢しをしてやっておるが、元来お主はわしのものじゃ」

低い声は部屋の空気を震えさせ、わたしの体をも震えさせる。さっきまでのかわいい声とはまるで違う、まさに魔王さながらの静かで恐ろしい声だ。
心臓がドキドキして、呼吸が浅くなっていく。瞬きすることすら出来なくて、わたしはノッブの、織田信長の深紅の瞳にすっかり見惚れてしまっていた。

「初めにそなたを抱いたのは他の誰でも無い、このわしである事をまさか忘れた訳ではあるまいな?」

体が熱い。もちろん、忘れる事などあるはずがなかった。わたしは、ノッブのものだ。
わたしが口を開こうとしたその瞬間、胸ぐらを掴んでいたノッブの手が突然離れ、今度は肩をぐっと押される。非力なわたしが床にどさりと倒れ込むのを、ノッブは立ったまま見下ろしていた。

「なまえ、返事はどうした?」
「……は、はい……」

カラカラの喉から出た声は、やけにかすれていた。ノッブはわたしの体に跨ると再び胸ぐらを、今度は両手で掴んだ。カルデアの制服のボタンが一つ、ぶちりと音を立てて床に転がっていく。
すぐ側にノッブのかっこいい顔が近づいてきて、頭の中がぐらぐらした。部屋の張り詰めた空気のせいか、喉の奥がさらに渇いていく気さえしてしまう。

「これからも他の織田信長とよろしくやるのは構わぬが、そなたのその体、心の全てが間違いなくこのわしのものである事、忘れるでないぞ、なまえ」
「わすれま、せん」

忘れないし、忘れたこともない。ノッブの燃えるような瞳を見つめたまま、わたしはごくりと喉を鳴らしてそろそろと話を続けた。

「わたし、ノッブのことが今までもこれからもずっと、一番大好き。絶対に、これは変わらないよ」
「……なんというかお主、そういうとこあるよネ」
「へ?……んうっ!?」

そういうとこ?と尋ねようとしたのだが、わたしの口はノッブの唇によって塞がれてしまった。胸ぐらを掴まれたまま口内に舌を入れられて、ノッブの舌がぬるぬると口の中を動き回る。
訳がわからないままこのキスに夢中になっていると、どんどん気持ちよくなってきてしまう。行為中のことを思い出してしまって頭の中が、ぼうっとする。

「ふぁ……♡はあ……♡」
「……わしの機嫌を取るのが上手いというか何というか……。なまえのそれが計算であれば今すぐに撃ち殺すところなんじゃが……」
「ひゃ、あっ♡」
「うーん、愛いやつ。どうもわし、そなたが相手じゃとついつい甘くなっちゃうのう!」

わたしの胸ぐらから手を離したノッブは、その手をするすると体に滑らせる。甘えた声を出すわたしを満足そうに見るノッブは、気がつけばいつもの調子に戻っていた。
機嫌を取るのが上手い、ということは今は機嫌が直ったということだろうか。わたしのさっきの言葉で?
そう思うとうれしくて、胸がきゅーっとする。ノッブの背中に手を回して名前を呼べば、ノッブはフッと笑ってみせた。

「惚れた弱みってやつじゃな。……ま、是非もないよネ!」

その笑顔は太陽のように明るく熱く、わたしはまたノッブへの気持ちを燃え上がらせたのだった。ノッブは自分のことを甘いと言ったけれど、わたしだって大概ノッブに甘々なのである。