最近、隣の家からごく稀にえげつない物音や声が聞こえるようになった。
隣の家に住んでるのは年の近いめちゃくちゃかわいい女性だ。出勤する時にリーグスタッフの服装をしているので恐らくリーグで働いているんだろう。人生勝ち組だ。すごい。
そんな彼女の家から聞こえてくるのはギシギシドタバタいう音に加え、すさまじい喘ぎ声だった。
初めてその声を聞いた時は壁に耳を張り付けてひたすらシコった。いや、初めてというか今もずっとそうだ。声が聞こえるとすぐさま壁に張り付いてシコっている。
時々家の前で会うと「おはようございます」と微笑んでくれ、更には「勉強がんばってくださいね」などと言ってくれる名前も知らないあの天使のようなお隣さんが、こんな声を出してるんだと思うだけでも勃起ものだ。
そして恐らく、相手の男は二人居る。浮気しているとかではなく、男二人が同時に家に来てセックスしてるのだ。男の方の声はお隣さんと違ってそこまででかくないのでハッキリと聞こえないのだが、違う声が聞こえたり男同士で会話していたりする。
あんな「わたし、えっちなことはよくわかりません♡」みたいな顔をしてるくせに実は3Pしてるとかヤバすぎる。
たまらず大学の友達に話したのだが「ポケモンの鳴き声じゃねぇの」だとか「妄想だろ?」だとか言われてしまった。隣人が3Pセックスというのはやはり友人達にとっても非現実的らしい。
しかし、現実に起こっている。まさに昨晩、起こっていた。
一晩中「イくっ♡イぐっ♡」だとか「きもちいいれすっ♡」だとか甘ったるい喘ぎ声を聞かされて眠れるはずもなく、俺はいつものように壁に張り付いてシコりまくっていた。お陰で寝不足だ。
今から夕方くらいまで寝てしまいたいが、今日は朝イチから外せない授業が入っている。
俺はチャンピオンとキバナの試合映像が流れるテレビを消し、冷蔵庫の中のエナドリを一気に飲み干して相棒のココガラと一緒に玄関のドアを出た。

「やっぱりベッド狭すぎねぇ?オレさま新しいベッド買っちゃおっかな」
「しかしあまりデカいベッドを買うとなまえの部屋を圧迫することになるぜ……いっそ、家を新しくするのはどうだ?」
「おっ、いいねぇ!それなら、なまえちゃんとダンデとオレさま三人で住める家買わねぇ?」
「あ……」

俺が外に一歩足を踏み出した瞬間、お隣さんの家から男二人が会話をしながら出てきた。その会話内容に思わずピシリと固まっていると、めちゃくちゃデカい二人組は俺の前で立ち止まった。
二人とも目深にキャップを被り、サングラスをしているがさっきの声には聞き覚えがある……というか、さっきまでテレビで流れてた声だ。
これ、ダンデとキバナ……えっ、まじで?ホンモノだよな?ウソだろ、お隣さん……?
まひしてしまったかのように動けないでいると、二人はにこりと微笑んでひらひらと手を振りながらすぐにその場から立ち去ってしまった。

「いてっ」
「ガァッ!」

今の出来事が信じられず、放心状態で立ち尽くしていたのだが、ココガラに背中を思い切りつつかれて我にかえった。
ヤバイ、授業!遅刻する!
ココガラに「走るぞ」と声をかけ、俺は全力で走った。次……次に二人が来た時に、本当にダンデとキバナだったのか確かめよう。もし本当にそうだとしたらダンデとキバナと3Pするお隣さん、ヤバすぎだろ!
この出来事のせいで落ち着かない一日を過ごした俺は、大学から家に帰るなり倒れるように眠ったのだった。







翌日、夕方ごろに起きた俺が飯を買うため外に出ると、なんとお隣さんにばったりと出くわした。どういう顔をしたらいいかわからないぞ。ココガラ、俺の顔の前を飛んで顔を隠してくれ。

「あっ、こんばんは」

にっこり笑ったお隣さんは、相変わらず最高にかわいい顔と声で俺にあいさつしてくれた。昨日のことを思い出して、動悸息切れ発汗がヤバイ。

「こここここここんばんは」
「急なんですけど、引っ越しすることになったんです。最後にお会いできてよかった。勉強がんばってくださいね。ココガラも元気で」
「えっ、あっ、ハイ……」

急すぎて感情がついていかない。俺の口から出たバカみたいな返事を聞いたお隣さんは、ぺこりと頭を下げてそのまま俺の前を通り過ぎて行った。引っ越し……引っ越しか……。

「ガーァ!」

ふいにココガラが一声鳴くと、それに返事をするように大きなアーマーガアの鳴き声が響いた。思わず鳴き声の方角を見れば、そらとぶタクシーが舞い上がっていく。そのタクシーの中には、お隣さんと、それを挟む二つの人影があった。
その人影の人物と一瞬目が合ったような気がして、心臓が高鳴る。やっぱり、あの人たちだ。
お隣さん……いやもうお隣さんじゃないけど、ダンデとキバナと三人でどこかに住むんだろうか。壁一枚隔てた先に、すごい世界が広がってたんだな……。
あっという間に見えなくなったタクシーを見送って、俺はココガラと一緒に歩き始めた。

「……ココガラ、俺そらとぶタクシーの運転手になろっかな……」
「ガア!」

運転手になったらあの三人とまたどこかで会えるかも。そんな理由で将来を決めるのは馬鹿げてるだろうか。
とりあえず、飯買って帰ったらダンデとキバナとお隣さん(だった天使)の3P思い出してシコろう。めちゃくちゃシコろう。いつかまた、お隣さん(だった女神)たちと会えますように。