「オレさまのジュラルドンは今日もお尻がかわいいなぁ!」

わたしの投げたオモチャのボールを追いかけるジュラルドンを眺めながら、キバナさんが隣でそう言った。その顔を見上げてみればふにゃふにゃとヌメラのような笑顔でジュラルドンを見つめている。
確かにキバナさんの言う通り、ジュラルドンのお尻は手入れがしっかり行き届いていてぴかぴかつやつやで、歩くたびに尻尾が左右に少し揺れるのがたまらなくかわいい。

「お尻、かわいいねぇ」
「だろ?おっ、ボール捕まえたみたいだな」

キバナさんの言葉通り、転がるボールを捕まえたジュラルドンはのしのしとこちらに向かって戻ってきていた。戻ってくる姿もかわいい。たぶん、今わたしの顔はキバナさんと同じくらいふにゃふにゃになっている。

「ごーきん!」
「よしよし、ジュラルドンいいこいいこ」
「さすがオレさまのジュラルドンだな」

ぴかぴかに光るジュラルドンの頭を撫でてあげると、ジュラルドンはうっとりと目を閉じて喜んだ。うぅ、ほんとにかわいい。かわいすぎる。
メロメロになっていたわたしの手を、ジュラルドンが優しくとんとん、と叩いた。もう一度ボールを投げてほしいのだろう。

「よーし、じゃあもう一回投げるね」
「じゅら!」
「あ!?」

張り切って投げたボールは、あらぬ方向へと飛んでいってしまった。ぼすっと音を立てて木の枝に引っかかったボールを、わたしはすぐさま追いかけた。あれではジュラルドンが取れない。ボールが取れなくて落ち込むジュラルドンが頭に浮かび、考えるよりも先に体が動いていたのだ。
小走りでボールを取りに向かうわたしに、キバナさんが驚いたように声をかける。

「なまえ、オレさまが取りに行くって」
「だいじょうぶ!ジュラルドンと待ってて〜」

そう返事をして、わたしはボールの引っかかった木へと向かった。幸いなことにボールはそんなに高くない所に引っかかっているようだ。これなら揺らせば落ちてくるだろう。
ガサガサと音を立てながら木を揺らすと、いくつかの木の実と一緒にボールがポトリと落ちてきた。それをすぐに拾って、急いでキバナさんとジュラルドンのもとへと戻る。落ちた木の実は後でまたカレーを作るときに拾いにこよう。

「おまたせ〜!ジュラルドン、へたくそに投げちゃってごめんね」
「ごーきん」
「オレさまのなまえのお尻もかわいいな……」
「え?」

ジュラルドンに向かって話しかけていると、キバナさんがポツリと呟いた。今わたしのお尻の話してた?

「オレさまそのかわいいお尻触りたくなっちまったんだけど」
「急になんで!?」
「ボール拾いに行くなまえのお尻見てたらつい。……触っていい?」
「い、いま触るの?やだ!」
「じゃあ今じゃないならいいのか?」

めちゃくちゃ整ったキバナさんの顔面が近付いてくる。わたしはこの顔に迫られて断れた試しがない。そしてそれは、もちろん今も同じである。

「うぅ……後で、テントの中入った時なら……」
「約束な」

にこにこと上機嫌に笑ったキバナさんはわたしの手からボールを取ると「いくぞ」とジュラルドンに声をかけながらそれを投げた。わたしの暴投とは違い、綺麗な放物線を描いたボールはちょうどいい距離でポトリと草むらに落ちていく。
ボールを追いかけるジュラルドンのお尻はやっぱりかわいかった。キバナさんからしたら、わたしのお尻もあんなにかわいいのだろうか。うれしいような複雑なような気持ちになりながら、隣に立つキバナさんにそっともたれかかった。
腰にするりと伸びてくる大きな手のひらは一瞬お尻の方へと向かいかけ、そのままわたしの腰を抱きよせる。
キバナさんの顔をチラリと見れば「後で、だもんな♡」と甘ったるい声が返ってくる。……これは後で、散々触られることになるかもしれない。