「……なまえ、まだ起きてるかな」
「うん……?炭治郎くん?」
布団でうとうとと微睡んでいると、襖の向こうから炭治郎くんの声が聞こえてきた。一瞬夢かと思ったが、この優しい透き通った声は間違いなく炭治郎くんの声だ。
日中の鍛錬でへとへとの体に鞭打って、のそりと布団から起き上がる。もう一度襖の向こうの炭治郎くんに「どうかした?」と声をかければ、少し緊張した声で「入ってもいいかな」と返ってくる。
「うん、いいよ」
「こんな夜更けにごめん」
ゆっくりと襖が開いて、申し訳なさそうに眉を下げた炭治郎くんが入ってくる。炭治郎くんも、今日はくたくただろうに一体どうしたのだろう。今日は思い切り体を動かしたのに。
「その……えっと、なんだか興奮して……」
「眠れないの?」
部屋の入り口で立ちすくむ炭治郎くんを呼ぶように、わたしは布団をめくってぽんぽん、と自分の隣を叩いた。鍛錬がキツすぎて、逆に眠れない経験はわたしにもある。
眠れない時は人と一緒にお布団に入るのがいいと、昔誰かから聞いた気がする。温かくて、安心して、眠くなるそうだ。こんなことを考えるのははしたないかもしれないが、わたしとしても炭治郎くんと眠るのは、あったかくてとても気持ちがいいから大歓迎だ。
炭治郎くんは、ぎしりと畳を鳴らして、わたしの側へと近づいてくる。その面持ちは、やはりまだ少し強張っていた。
「……炭治郎くん?」
「なまえ」
目の前へ来た炭治郎くんは、がしりとわたしの両手を掴み、顔を赤くしてわたしの名前を呼ぶ。そして、こんな夜更けに出すべきではない声の大きさで己の欲望を吐き出した。
「絶対に優しくするから!一回で終わるから!だから、抱かせて下さい!!!」
「な……っ、だ……!?」
「もうなまえの事を抱きたくて堪らないんだ!嫌だって言ったら、すぐに止めるから!どうかな!?」
「こ、こえ、声が大きい……」
慌てて手で炭治郎くんの口を塞げば、そのままちゅう、と手のひらに口付けられる。手を引こうにも、手首を掴まれていて動かせない。
炭治郎くんの熱っぽい視線に、わたしの頬がものすごく熱くなっているのを感じる。炭治郎くんの声とは対照的に、わたしはもごもごと小さな声で炭治郎くんに問いかけた。
「……本当に優しくしてくれる?」
「もちろん」
「やっぱりもう一回って、何度もしない?」
「しない」
「そ、それなら……いいよ……」
わたしの返答を聞くや否や、炭治郎くんはわたしを布団に押し倒した。鍛錬のせいで軋む筋肉に気づかないふりをして、いつのまにかわたしよりうんと広くなった炭治郎くんの背中に腕を回した。