桐生一馬が死んだ。



 彼のために泣く者は誰もいない。

 皆わかっていた。


 桐生一馬は死なない。



 口に出しても仕方のないことだった。

 口に出しても出さなくても、結果は変わらない。


 ただ、信じればいい。それだけだった。




 桐生一馬を最も執念深く追ったであろう男、真島吾朗にとってもそれはただ一つの真理であった。

 確かめるのが怖いと口走る者を、笑い飛ばした。
 本当に失うことが怖いと泣く者を、殴り飛ばした。

 願わくば辿り着かないでくれ。
 そう思いながら今日も真島吾朗は神室町で彼を探す。




 そんなある日。
 桐生一馬を見たという証言が、真島のもとに届いた。

 ほれやっぱり。
 桐生ちゃんが死ぬはず無いやないか。

 あまりの嬉しさに、その手で掴んだバットで一人の人間を殴り殺した。


 桐生はなんとニューヨークに居るという。

 ニューヨークなんて、行こうと思えばいつでも行ける。

 そこで会えるかは勿論わからないが、行こうと思えばいつでも羽田空港に迎える。

 いつでも会える。

 でも、それを桐生ちゃんが望むだろうか。

 言い訳をする者の髪を斬り落とした。


 兎にも角にも、まずは居場所を突き止めろ。

 俺に声を。声が無理なら言葉を届けてくれ。

 願わくば辿り着かないでくれ。
 そう思いながら今日も真島吾朗は神室町で遺言を護る。







 そんなある日。
 桐生一馬からの手紙が、真島のもとに届いた。

 ほれやっぱり。
 桐生ちゃんが死ぬはず無いやないか。

 あまりの嬉しさに、その手で掴んだバットでまた一人の人間を殴り殺した。


 桐生はなんと上海に居るという。
 手紙には、こうあった。


 兄さんへ

 元気か。俺はこの前から風邪を引いてしまっているが、まあ元気だ。

 東城会のことを、頼む。

 俺は日本にうんざりしたんだ。

 あんな小さい国ではなく、もっと大きな世界でやるべきことがあると感じている。

 兄さんには苦労をかけるが、俺は大吾のこと、兄さんのことを信じている。

 もっと強くなったときに、いつか帰る。

 ではまた。




 手紙の最後は誰かが代筆したのだろうか、字体が変わってしまっていた。


 桐生一馬は、生きている。

 もっと大きな男になるために、今は上海で何かと闘っている。

 俺に、東城会を支えてほしいと願っている。

 ならば神室町から離れるわけにはいかない。

 涙を流す者の目玉を抉り取った。



 次の手紙を待てばいい。

 次の手紙を待つだけで、それだけでいい。


 俺の愛する男は、俺に約束をつけて今もどこかで闘っている。

 願わくば辿り着かないでくれ。


 事実なんてどうでもいい。

 俺の桐生ちゃんがどこかであのギラついた目で誰かを殴り飛ばしている。




 願わくば辿り着かないでくれ。

 永遠の嘘をついてくれ。

 出逢わなければよかった人など、いないと笑ってくれ。



 俺に永遠の嘘をつかせてくれ。