1.さよなら、わたし

泣いて、しまいそうだった。
ひどい雨が降っている。
ざあざあと大きな音を立てて打ち付ける水は痛みすらも感じる程だ。水たまりに広がる大きな波紋は勢いが強すぎて、もはやただ揺らいでいるだけにしか思えない。
そこに赤い水が混じっていくのを、どこか遠くの事のように見つめていた。
雨に冷えた体も、力が抜けていく感触もすっかり麻痺してしまった痛みも、今はもうどうでもいい。目の前のなにもかもが、自分の世界から遠ざかっていることを感じて、ただ、この空のように泣いてしまいそうだった。
──まだ、ちゃんと伝えてないのに。
──まだ、見つけていないのに。
──まだ、わたしは、まだ……
体は動かないのに、思考だけはぐるぐると脳内を渦巻く。
もう耳も聞こえないのに、自分の終わりだけはよくわかる。
その事にどうしようもない焦燥感と絶望感とを感じながら、静かに、目を閉じた。