「は〜理鶯に会いたい」
「うるっせぇんだよ黙ってラーメン食え殺すぞクソボケ」
わたしの隣で碧棺くんが豪快にラーメンをすする。理鶯に会いたいと言っただけなのに暴言を3つも吐かれたことがまだ腑に落ちないけど、言われた通りわたしもラーメンをすする。おいしい。さすが碧棺くんの見つけたお店。
「碧棺くん、おいしいね〜ここのラーメン」
「当たり前だろーが。まずけりゃこねぇよ」
「理鶯にも食べさせたい」
「いいから黙って食ってろ」
「はい」
ふうふうと冷まして一気にすすると豚骨の濃い味が口に広がる。周りにはもうわりと遅い時間なのにたくさんのお客さんがいて、お酒を飲んでシメにラーメン!風の人や、今から出勤!っていう感じのホスト風のお兄さんもいるし、黙々とラーメンをすする人もいる。碧棺くんがいなかったら、すこし萎縮してしまいそうんじゃないかっていう感じのお店。碧棺くんがいてよかった。
碧棺くんは、こうしてたまにふらっとご飯に誘ってくれる。わたしが、理鶯にしばらく会ってないなあ寂しいなあなんて思ってる頃に「おう、飯行くぞ、飯」って電話をくれる。別に見計らってるわけじゃないだろうけど、素直に嬉しい。あと、碧棺くんの行くお店はふつうにすごくおいしい。治安がちょっとあれなところが多いからリピーターにはなれないけど。
「理鶯、今日何食べてるんだろうね…ちゃんと食べてるかな…」
「あいつのことだから何でも食べてんだろうよ」
「うん、まあ何でも食べてはいるだろうけどさ…栄養とか味とか食材とか色々心配になるんだよ…」
「そんなに心配ならお前もいっしょにサバイバルしてくりゃいーだろうが」
「そ、そうだよね…?理鶯のとこからでも行こうと思えば仕事行けるもんね…?サバイバル、は、始めようかな…」
「やめとけバカ」
「碧棺くんが言ったんじゃん」
「言ってねえ。いいから早くラーメン食え」
「はい」
いつの間にか碧棺くんは自分のラーメンを食べ終わっていたみたいで、ものすごく面倒くさそうにわたしが食べ終わるのを待っている。申し訳なく思って慌ててラーメンをすすると舌を噛んだ。碧棺くんが舌打ちをする。
「置いてきゃしねーからゆっくり食え!」
「いやなんか悪いなあって」
「悪くねえ!うるせえ!早く食え!」
「結局ゆっくり食べればいいの早く食べればいいの…」
「ゆっくり黙って早く食え…わかったか…?」
「は、はい」
瞳孔の開いた目ですごまれると迫力がすごい。でも、碧棺くんが置いていかないっていうならきっとその通りなんだろうし安心してゆっくり食べよう。すごくイライラした顔して待ってるのはやめてほしいけど。
碧棺くんだって最初からこんなに穏やかに待っていてくれてたわけではない。ご飯に誘われ始めた頃は、なんかもうほんとなんでわたし呼んだの?ってくらい会話もなくて、自分が食べたらお金を払ってさっさと帰ってしまっていた。でも碧棺くんが連れて行ってくれるお店は治安が悪いし、ある日碧棺くんに置いていかれた直後に絡まれて、ビビったわたしはどんぶりを抱えながら大泣きして碧棺くんを追いかけたのが相当恥ずかしかったらしい。そんなこんながあって、今ではだいぶイラつきながらも待っていてくれる。とても助かる。
「クソ…なんか腹減ってきやがった」
「嘘でしょ…今ラーメン食べたばっかりじゃん…」
「テメーがチンタラ食ってるからだろ」
「なにその理論!あ、ねえ、あのね、わたしがあんまり意味不明なこと言うとねえ、理鶯ってすごく嫌そうな顔するんだよ」
「ああ?理鶯じゃなくたってするわそんなもん」
「うん。なんか、碧棺くんが意味わかんないこと言うから思い出した」
「あーやっぱなんか食うか」
「あ、花シューマイ頼んだら半分こしようよ」
「はあ?俺様が全部食うに決まってんだろ」
「えー食べたい」
「別に頼みゃいいだろが」
「そんなにいらない」
「ふざけんなじゃあ食うんじゃねえ」
花シューマイとチャーハンを頼んだ碧棺くんだけど、なんだろう、半分こしてくれるのかな。ラーメンが少しのびている。もう夜も深くなってきてるけど、理鶯は何してるんだろう。もう寝てるのかな。お店はまだまだ騒がしくて、碧棺くんももうイライラはしていない。気だるそうに肘をついて私がラーメン食べるのをぼんやりと見ている。のびたラーメン好きなんだ、と言うと、すごく嫌そうな顔をされた。ああ、理鶯といっしょだ。理鶯に会いたいなあ。