夜明けの渚は、星々が日の朱空であっても構わず輝きとても綺麗だった
海なのに不思議と凪いだ海面はびゅう、と風が吹くとたちまち波を立て少女の足元を濡らす
「私さ、まだ子供だから分からないけど」
くるりと身を翻し、磯風に揺られるように少女は少年、リゼルグにこう話した
「大人は、しんどいねぇ」
「…そうかな」
「たぶん、きっと大変だと思うよ。この島で、シャーマンの王になるために来たってのにこんな社会勉強をさせられるとは思わなかった」
少女は気楽そうに喋る
けれどその様子は、ひどくつらそうで、この数日の大きな争いで参ってしまっているのが分かった
それをリゼルグは知っている。だけど適切なフォローを彼は少ししか知らない
彼はただ黙って、波と戯れる少女を見つめ、共に憂いた
「ほんと、嫌だよね」
「…そうだね。僕もこんなの、嫌」
砂浜に足跡を残し、リゼルグの隣へ腰掛け少女はため息混じりにこの状況へ対する嫌気を呟く
「ハオなんて、倒せるのかな」
「……倒せるよ」
「…………ほんとに?」
「僕らには葉くん達が居るじゃないか。なにより、君もいるよ」
リゼルグは隣座するなまえの手に、自らの手を重ね勇気づける様に互いのを見つめる
「…うふふ、ごめんね。なんか、弱気になっちゃった」
「そう、そうだよ。君はその気の抜けた笑顔が1番」
「えぇっそれ褒めてる?」
「褒めてるよ」
磯風が2人の髪をしならせた
それを合図にゆっくりと2人の距離は近づきお互いの額を寄せ合い、まるで仲睦まじい兄妹のように身を捩らせ、手を握りあう
彼らだけの、約束の儀式
いつからか友愛の心が惹かれ合った少年と少女は、時たまこうして勇気と、生きる事を誓うのだ
「今回も大丈夫だよ。だってなまえだもの」
「うん。リゼルグも、大丈夫」
「ねぇなまえ。帰ったら何したい?」
「やだぁ。それって大体帰って来れないセリフじゃん」
「そういうの気にするんだ…なまえらしいね
「ジンクスは信じるほうなの。……でも」
「?」
少女はゆっくりと、睦み合う体をリゼルグに寄せてから、頬にひとつ小さな口付けを落とした
予想外だったようで間の抜けた顔をする少年に、なまえははにかみ、囁いた
「帰ってきたらまず、勝利の英雄にキスをあげてみたいな」
また、磯風が2人の髪をしならせた
陽が登れば、彼らは王が眠るルルイエへと発つ
せっかちな仮の英雄様は、捧げる接吻を我慢出来ず貰ってしまった
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