※学パロ。中学生くらい。

「あっ、センパイ!こんにちは!!」
「こんにちは、なまえ!」

なんてラッキーな放課後だろう!雑用で居残りになって、人気の少ない廊下を歩いてたら大好きなリゼルグ先輩と会えるなんて。
嬉しくってつい大きな声で挨拶したら、先輩は嫌な顔1つせず朗らかな様子で返事してくれた。
本当に理想的な人。ハンサムだし、優しいし、頭もいいし(お陰でテスト勉強も教えてくれる)…
出会った時から憧れてもう少しで一年経ちそうだけど、全然このリスペクトの気持ちは変わらない。素敵な先輩。
気持ちを包み隠さずに表情に出していたら、なにか面白かったみたいで先輩も私みたいに笑って頭を撫でてくれた。

「わぁ!?ど、どうしたんですか!!」
「ついつい、ね。可愛らしいから」
「うぅ〜…もう一生頭洗いません。大切にします」
「いや、ちゃんと洗ってね?…嬉しい事言ってくれるのは有難いけど、いろんな人にそういう事はあまり言わないでね」
「ほかの人…?私、センパイにしかこんな事、言いませんよ?後にも先にもセンパイだけです」

私が素直にそう言うと、リゼルグ先輩は目を丸くしてキョトンとした。何か不用意な発言でもしてしまっただろうか?ぶっちゃけ私は薄々自分は口が軽いというか、おかしな表現をしてヘイトを買ってしまいがちなのでは?と感じている。
なのでついにリゼルグ先輩にも、やらかしてしまったかもしれないと思い様子を伺うと心配しすぎだったらしく、いつものようにふわりと笑い出した。

「…そっか。それなら安心かな」
「なんかよく分かりませんが…センパイが安心されたのなら良かったです!」
「相変わらず君って子は明るくていい子だね」
「はい!明るさが取り柄ですから」

手を大きく横に広げて、元気さをアピールする。私から元気と騒がしさを抜いたらアイデンティティの欠如した無個性人間になっちゃう。
今の自分はリゼルグ先輩よりかは好きの度合いは低いけれども自己肯定として好きだし、この取り柄を活かさねば。空回りせずに活かしたい。
お互い目を合わせてはニコニコと笑いあっていたら、見慣れた顔の「別のせんぱい」がやってきた。

「学校内でなーにしてんだおまえら…」
「ホロホロじゃん。放課後なのにテンション低いよー!」
「さっきぶりだね、ホロホロ君」
「おっすー。てかなまえ、リゼルグには先輩呼びすんのに俺にはナシかよ」
「だって私のセンパイはこの人だけだもん」

先輩の腕をお借りして、腕組しながら彼を指した。
リゼルグ先輩は少し戸惑っていたけど、その様子を見たホロホロがますます機嫌が悪そうになっている。

「あーもう!いちゃついてんじゃねーよ!リゼルグ、嫌だったらキッパリ断る方が後々楽だぜ」
「なっ?!い、嫌なわけないじゃないですか…ですよね?センパイ……?」
「フフ、嫌じゃないよ。まぁ突然くっついて来ると驚きはするけどね」

ホロホロの発言を真に受けてしまい、問いかけるように先輩を見つめたら困った顔でそう答えた。

「そう悲しい顔をしないで。本当だよ。建前とか、そんなのじゃないから」
「よ、良かった〜…!センパイに嫌がられたら私、1番嫌ですもん」
「惚気けてんなぁ。…これ以上見てたら胸焼けしそうだから帰るわ」
「また明日ね、ホロホロ君」

げんなりした様子でホロホロは廊下の先を行く。
まだ中学生だってのに湿っぽいなぁ。後ろ姿の雰囲気が仕事で疲れたおじさんみたい。

「ホロホロってば、なんであんなにテンション低いんでしょうね?」
「うーん、勉強嫌い…だからかな」
「なるほど。普段はあんな感じなのに、やる時はマジでやりやがりますから中々侮れないんですよね、あの人」
「…へぇ、なまえとホロホロ君って仲いいんだ?」

……?何でそんなに含みを持たせた言い方をするんだろう。たしかにホロホロとは腐れ縁でリゼルグ先輩より長い付き合いだけど、そんな仲は良くない。けれど先輩はちょっと不満げに聞いてくるもんだから、何か失言でもしちゃったのかと不安になってきた。

「そんなに不安そうな顔しなくたって…ふふふっ、さっきから表情がコロコロ変わって…やっぱりなまえは面白い」
「お、面白い、ですか??」
「うん、ちょっとホロホロ君と仲いいのかなって勝手に考えてね、ついジェラシーを出しちゃった。ボクらしくないな」
「じ、ジェラシー?」
「うん。なまえの手前で毅然としてたいのに、こうした事で簡単に嫉妬しちゃってついボロが出ちゃう」

嫉妬?ボロ??一体どういう事を意図してるのですか。
出てきたキーワードを繋げてもよく分からない。
先輩はなにを考えてるんだろう…?私が馬鹿だから分からないだけ…?!

「そんなに考えこもうとしなくていいんだよ、単純な事だから」
「えっと、さっぱり分かりません…」
「分からない。かぁ。その方が好都合だよ。ふふっ、なまえ」

先輩は私の名前を呼ぶと手を優しく握ってきた。
所謂、これは恋人繋ぎとも呼べる握り方で、きっと彼はそういうのを意図せずしていんだろうと思う!だからこの握り方には何も意味はない。何もドキドキする必要なんてない!嬉しいけどドキドキしちゃだめ!

「分からないなら、そのまま聞き流してね…。ボクは嫉妬深い。だから好きな人は独占したいって思うんだ」
「……??」

さっきからの意味深発言で疑問符しか発言出来ない。好きな人って、誰。
あぁっ、もう、邪で身勝手な願望がフツフツと湧き出てしまう!
先輩の好きな人は、私だったらいいなとか、そんなこと思うのはタダだけど、違ったらかなりショックだもの。
だから、過度に馬鹿な事を期待しちゃぁ駄目、だめ。

「君はボク以外にはこんなことしてないって言ってるけど、案外他人に思わせぶりな事ばかりしてると思うよ」
「えっ」

握られた手がより一層強く握られる。
先輩の指摘に、私は一生懸命そんな事をしたっけと自身の行動を顧みるも全く検討がつかない。
というか、先輩の方が今、とても思わせぶりな事をしているのでは?!

「ボクはね、よーく君のことを見てるんだよ。今もこうして、ずっと見てる。誤解を招くことをすると何人か本気にしてしまうよ。そうなったら泣きを見るのはなまえ。…まぁ既に1人は本気にしちゃってるから忠告しても遅いかな」
「へっ、あっ。あの、そんな事言われると…変に期待します…センパイ…」
「期待していい。むしろいっぱい、期待してよ。これ以上君の天真爛漫な可愛さを、ボク以外に振りまかないで?なまえ」

そう言うとリゼルグ先輩は…私の額に軽くキスを落とし、緑色の綺麗な瞳で私を見つめた。

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