この男の只ならぬ妖気と、本能的に感じる嫌悪によって、ここまで拒絶する反応を示したのは初めての事で、とても面白いと感じたのです。
私は血のにじむ努力で転生を成し遂げた彼とは違い、ちょっとした副作用といいますか、簡単に申しますと呪いのようなもので完全な死を遂げることは無理でして。あの男の秘術よりかは精度は低く、大切な思い出は残す事は出来ず幾年も人として産まれては死ぬという事を繰り返しておりました。
真の己を知るものは誰一人としていない。そんな寂しさを抱え生きるのはとても辛く、悲しい。
そんな人生を何度も送りました。そして私はカヤという名を与えられ優しいお父様とお母様の間で、この世に生を授かります。
そこで、二度と会うことがないだろうと思っていた、あの男に再開しました。
幼い少年の風貌で居ましたが、紛うことなきあの麻倉葉王でした。
Bonus Episode
Apollo program
私がなぜ、葉王をからかうのかと言うと単純に楽しいからでありました。
子供のような事をしているのはとうの昔に分かりきっていますが、それが私なのです。
毛嫌いをしているのに、それでも願いを伝えれば彼は気紛れだと言って助け舟を出してくれる優しさを、どのような事があっても忘れることはありませんでした。
私ははっきり申しますと、葉王の事は嫌いです。
きっと彼も同様に思っているのでしょう。
しかし一言に嫌いだと申しても、その言葉の裏には沢山の感情が入り交じっています。
興味や感心、そしてなによりおかしな話ですが嫌いなのに共に居るのが心地よいのです。
そしてなにより、彼の事を好きだという事はどう転んでも変わらない。おかしな話ですが、嫌いなのに好きなのです。
あの男が鈍感だと笑っていましたが、私もその気持ちに気付いたのはつい最近なのでこの点をつつくのは恥ずかしい行動だと反省しています。
なので私が初めて人としての死を臨んだ後のおよそ1000年間は彼に会えないことの寂しさでいっぱいでした。
彼は転生に関する術を研究しているのを知っていたので、いつか会えるのではと生まれ変わる度にそのちいさな希望を持ちつつ生きて参りました。
その望みはやっと今、1000年越しに果たされたのです。探し求めていた人と関わらないわけがありません。
しかし彼は再開するまでの間に、沢山の出来事があったようで、閉ざした心がより強固に固まっていて驚きました。
それが原因か分かりませんが、若干…いえ、大層酷く自身の気持ちに疎くなっており、彼の魅力であった面白さもあまり感じられなくなっています。
…元より嫌いな人間の利点を除けば、もうそれは共にいる意味などありません。
段々と再開の喜びも薄れ、それと比例するように彼への関心も無くなっていきました。
あの頃の、不器用ながらも「こころ」と上手く付き合っていた彼が私は好きです。
覇道を突き進んだ先、彼はきっと変わるでしょう。
好転するか、はたまた悪い方向に傾くかは彼自身とそれに抵抗する運命が決めます。ですから、私は何も出来ません。結果を待つのみです。
そうしてしばらく詰まらなくなった葉王と合わずして、季節が何度か変わった頃。
ある大きな出来事があり、彼は運命に負けました。
それからというもの、彼は3度目の再開からは随分と大人しくなり尚且つ自身の心と向き合う様な余裕が出てきたそうで。
またあの頃の、暖かく楽しい関係へと戻りつつあります。
私が彼の居そうな場に赴き茶々を入れるとそれはもう塵芥を見るような目で見てくるのです。
彼が気分を害する姿を見るのは本当に楽しくて楽しくて仕方がありません。
昔のように、またこうして過ごせるのは夢のようです。
あぁ、そう言えば彼は覚えているのでしょうか。
初めての死の間際、私が言った言葉を。
……特に意味の無い言葉だったので覚えていなくてもいいのですが。少し気になりました。
けれど特に言及はしてこないので、私も触れません。
実際の所、なんの意味もない言葉だったと思うので私も覚えていないんですけれどね。
あとがき