一目あった時。

その一言だけだとロマンチックに「恋に落ちた」だとか、「運命を感じた」とかに続きそうだが、そうではなかった。

拒否反応を示すものを目の当たりにした人がする、反射と言うべきか。
双方毛を逆立てんばかりに鳥肌を立てるのは、後にも先にもこれ1度きりだった。

1 仏の御鉢の石

時は遡り、今の僕を形成したあの平安の時代にアイツと出会った。
二度と顔も合わさんだろうと思っていた、例の女は、どうやらここまで相性の悪い相手は居なかったようで、面白いと言わんばかりの気持ち悪い笑顔で幾度となく僕の元に足を運んでは嫌がらせをする日々だった。

思い返す度に胃がムカムカする。
僕は人間が大嫌いだ。しかしあの女は人間と言うべきなのかまぁ、ファンタジーやフィクション地味てるがはっきり言うとアイツは「月から来たニンゲン」らしく、好き好んで習得した訳では無い読心も、月の言語で直接入ってくる。
喋る言葉は地球の言語でも、考えている言葉は違う。
そこもまた気味が悪くて、本当にここまで気持ち悪いと思ったのは初めてだ。


…しかし、何故今唐突に彼女の事を思い出したのだろう。
アイツは死んだ筈だ。僕の目の前で、息絶えた筈。

「ハオさま、かぐや、誰?」
「……キミは気にすることないよ。ただ昔に会ったムカつく女さ。もう死んだよ」
「じゃあ、あの人、ちがう?」
「は?」

オパチョが指さす先、僕達が拠点を置く河川敷を見下せる道路に、既視感ある雰囲気の女学生がこちらを見つめている。
夕暮れの日差しが逆行して顔は良く見えないが、あの風柄ははるか昔に出会った女にしか見えない。

「嬉しいわ。久しぶりの再開時に私のお話をしてくれてるだなんて。恋しかったのかしら」
「……嘘だろ」

すたすたと品よく僕達の元に歩き、段々とその姿が鮮明に見える。
衝撃だった。
アイツはなぜここにいる。
何故、あのままなんだ。

僕が余りにも酷く動揺しているのを察知したのか、隣にいるオパチョも怯え、女を避けるように僕の後ろに隠れる。
しかしその様子を見て何が楽しいのか、クスクスと笑い始める。
笑い方も、何もかも、一緒だ。

夢を見てるのか?いや、これは現実だ。幽霊とかでもない。普通に、目の前の人物は生きた人間だ。

「随分とお久しゅうございますわ。あの頃と違ってその…ほほほ、小さくなったのねぇ。は、お、さま?」
「何が目的だ」

持ち霊を出し、何時でも燃やし尽くせるように臨戦態勢を作る。
そうすると、僕の持ち霊が見えるのか目を丸くしてちょっと驚いた様子で歩みを止めた。

「いやねぇ。別に争いをする為に来たんじゃぁなくてよ。ただ、偶然あなたを見かけたから嬉しくて声を掛けたのよ」
「何故、生きてるんだ」
「あなたと同じよ」

あなたと同じ……?
転生術は僕だけが編み出し、僕だけが使える筈だ。
突然の予想外すぎる事で、柄にもなく考えが纏まらない。
言葉に詰まっていると、またまた嬉しそうにアイツは笑う。

「まぁ、詳しい事は後でお話しましょう?ほらほら、早くその悪趣味なものをしまいなさいな」
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