本日は晴天なり。決してこれは無線用語ではなく真の意味だ。
行楽日和にふさわしい天候で、不思議な事に私達は遊園地に来ていた。
…こんな場所に来るほど親しい仲になった覚えはないぞ。けどまぁ、楽しそうだからいいか。提案してくれた蓮のお姉さんに感謝しないと。

「オレ、日本の遊園地は初めてなんだよ」
「私もこういう所に来たの初めて」
「なまえは陰キャだから無縁そうだもんな」
「何だてめー、喧嘩なら今ここで買うぞ」
「おまえら止めろよ!せっかくの楽しい日に!!」

チョコラブがあのバカとの間に入って止めに入る。
ああそうだった、こんな日に不毛な争いはするもんじゃない。
今日は無礼講という事で少しの失言はスルー出来るくらいの余裕を持たねば。すぐに売り言葉に買い言葉となるのは私のいけない癖だ。「今だけは」大目に見よう。そう、い・ま・だ・け・は!!

「この2人はまだまだ子供だから仕方あるまい。このような場に来て気分が高揚しているんだろう」
「いや、思いっきり楽しもうとしてる奴が何言ってんのアンタ」

ニヒルな笑みで仁王立ちをする蓮の右手首には乗り物乗り放題券のバンドが括りつけられている。
私がそれを指摘すると「いちいち券を買う方が面倒」だと返された。10枚綴りのチケットだってあんのに、それすら消費する勢いでアトラクションに乗るってか。それはそれでノリノリじゃねーか!
わざわざ券売機まで行って、乗り放題券を買いに行く蓮を想像して少し笑う。

「あ!なんかあのクルクル回るブランコみたいなの楽しそう!あれ乗りたい」

周囲を見渡すと面白そうなものが目に入る。
すかさず好奇心に駆られて指を差し皆に提案すると、トンガリリーダーは直ぐに反対しだした。

「おいなまえ、勝手に決めるな!!俺の指示に従え」
「なんだよー、じゃあお前は何がいいんだよ」
「あれだ」

そう言うこいつの目線を辿ると、先には垂直に落下するフリーフォール…だっけ?確かそんな名前のアトラクションが聳えている。
めっちゃメインの奴じゃん。……ま、こうして大人ぶってそうな所もあるけどまだまだ年端も行かないガキだもんな、ああいう目玉に乗りたがる年頃なんだろう。こうしたイベント事に浮かれた仕草を見ると、なんか可愛らしく思える。

「こうした目玉のものを乗ることによってこの場所の程度が分かる」
「おぉ!いいな、オレも蓮に賛成ー!!」
「俺もー!そうとなったら早く行こうぜ!!」

我先にホロホロとチョコラブが駆け出す。
…実はこういう乗り物、初めて乗るから緊張するなんて言えない。
いいや、あんなものたった一瞬で終わる!!こんな所で愚図ついてたらシャーマンキングにはなれないぞ!意を決しろ!

*********

「し、死ぬかと思った」
「お前こういうのダメだったのか!ハハハッこいつは面白れぇ!!」

人生初の絶叫マシンは予想以上に凄まじかった。気持ち悪さと諸々のショックで放心しかけている所に、案の定あのバカが追い討ちをかけてくるのが腹立つ。
何笑ってんだよ畜生、乗る前はいけそうだと思ってたんだよ。いざアトラクションが動いた時に張りぼての虚栄心は轟沈したけど。

「なまえ大丈夫かー?ほら、近くの売店で売ってたから飲めよ」
「お、おぉ…チョコラブ…ありがとうな」
「蟻が父さんでありがとさ…」
「つまらん」

ダウンした私に気を利かせてくれたチョコラブが飲み物をわざわざ買ってきてくれた。
小さな優しさに感動を覚えていたら、いつもの寒いギャグを吹っ飛ばそうとしてきたが、蓮にぶった切られる。大将は容赦ない。

「そんなんで今日1日回れんのかよ。案外なまえもヘタレな所あんだなぁ」
「何だって?!今のは初めてだったからちょっと、その、ビックリしただけだっつーの!!ヘタレはお前じゃい!!」
「言うじゃねーか…なら次も行けるだろ!」
「おうおう、こうなったら全部制覇してやるよ。お化け屋敷でもジェットコースターでもなんでもやってやる」
「では、口だけでは無いということを確かめさせてもらおうか」

しまった、ついカッとなって豪語したけど初手からこんなんじゃ次も無理だろ!
今のフリーフォールで植え付けられた恐怖を思い出して軽口を叩いた事に後悔する…

次の目的地を決める悪魔のような奴らを見つめ重いため息を漏らすと、事情を察したチョコラブが慰めるように私の肩を叩いた。
そんな事は良いから助けてくれ。

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匿名希望様へ。
今回はリクエスト企画に参加して下さりありがとうございました。
遊園地に行く長編主人公とその仲間達でした。
ワイワイと馬鹿騒ぎする皆が書けてとても楽しかったです!
乱筆ですがお納めいただければ幸いです。
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