「こりゃ困った」

葉は眉を潜めため息をつく。
原因は目の前のなまえだ。今日の彼女は非常におかしなことになってしまっている。
なまえは確か成人のはずだというのに、葉達の視線を一向に受けるのは彼女と瓜二つの幼い少女。恐らく見た目的に葉達と同じ多感な年頃の女の子だった。

錯乱しながら居間に飛び出してきた見覚えのない少女に一時騒然となったものの、言葉遣いや所作そして何よりその見た目でなまえだと分かり今に至る。

「困ってるのは私の方!いきなり変な場所に来たかと思ったら「未来の私と入れ替わった」だなんて…!」

状況の整理をしても、まだまだ幼そうな少女は戸惑いを隠せない。
緊迫した面持ちでちゃぶ台を叩き皆に心中を吐露し、続け様に小さい声で「早く元の時代に戻りたい」と呟く。

「…体の変化の事なら、その筋の専門家が居るじゃない」
「アンナ…お前まさか」
「ファウストに、診てもらえばいいのよ」
「呼びまシタか」
「ぎゃあ!!」

いつの間に居たのか、なまえの真後ろに件の男が立っていた。
体を跳ね驚いたので、傍においてあった飲み物を隣にいたホロホロにぶちまけた。それが火種となって少年が突っかかり別の騒動へと発展するも、2人以外は我関せずとアンナとファウストの方へ注目する。

「丁度いい所に来てくれたわね。なまえがおかしい事になってるから診てくれないかしら」
「…ふむ、ナルホド。今日のなまえサン、めちゃ若く見えますねぇ」
「いやマジで若くなってるんよ!」
「そんな事が有り得るんですネ。いやはや、驚きです」
「驚いたのはこっちの方だ!何なんだよお前」
「記憶まで若返ったのですか。これは興味深い…」
「答えろよー!」

喧嘩相手のホロホロの胸倉を掴みながら不思議そうに少女を見つめるファウストに、なまえは問うたが返答は全然違うものだった。
若干の不気味な雰囲気の男に多少怖気づきながら様子を伺うと、何を思ったのか医療用のメスを取り出す。

「謎です。しかし、バラせば分かるかも知れない」
「ばっ……?!?」

命の危機を覚えたなまえは脱兎の如く、机や周りの物を気にせずひっくり返しその場から逃亡を図った。

「あーっ!なまえが逃げた!!」
「これ以上の面倒事は御免だ、奴を捕まえろチョコラブ!」
「えっ、オレェ?!」
「いや!!いやーっ!!こんな所で訳わかんないまま死ぬ方がごめんだっつーの!」

宿の敷地を後一歩の所で脱出できそうだったが無念、素早さに定評のあるチョコラブがO.S.を纏い捕まえる。なまえは猛烈に暴れたもののプツンと事切れたように抵抗をやめ諦めた様子で項垂れる。

「お、終わりだ…私捌かれるんだ…まだ14なのに…やりたいこといっぱいあったのに……うぅ…苦しまないよう介錯は頼んだ」
「なまえサン、そう冗談を真に受けないで下さい」
「へぇっ?」
「恐らく巫力の関係でこのような事になったのでしょウ。巫力と肉体は違いますから捌いてもわかりっこないです」

見た目も相まって全く冗談には聞こえない。
不満そうな表情を浮かべ自身を見つめるファウストはなまえに一笑して立て続けにこう言った。

「私は人体のスペシャリストなので巫力の事は断言できませンが…暫くすれば戻ります、タブン」
「ゆるっ」
「どこかの誰かに感化されて緩くなっているな」
「蓮、なんでオイラを見ながら言うんよ」

*************

なまえが突然幼くなってしまって早数日経った。
最初はお互い戸惑い距離感を掴みかねていたが、歳が近い事と、なによりなまえ生来の性格は特に変わっていなかった為、直ぐに打ち解け合い1週間もしない内に沢山の思い出を作った。

通常の姿の彼女には失礼かもしれないが、一同は「このままこの姿で居ても良いか」とさえ感じるほど少女は馴染んでいく。が、その日は唐突に訪れた。

「おい!!今日何日?!なんか暫くの記憶が吹っ飛んでるんだけど!!」
「??!?」
「ギャーっ!なまえがデカくなった?!」
「な、何だぁホロホロ…変な事言うなよ」

デジャヴ。あの日と同じように、なまえは慌てた様子で居間に飛び出すがひとつ違うところがある。
件以前の姿に戻っていたのだ。
普通なら喜ぶべき事なのだろうが、少女との不思議な絆を結びかけていた者はショックで落胆した。

「嘘だろ……あの可愛かったなまえチャンを返してくれ!なまえの姉貴!!」
「何でお前私をちゃん付けしてんの?!怖っ!」
「オレも竜に同感だぜ…明日一緒にギャグ考えようなって約束したのによぉ」
「私そんな約束してない。誰だよそいつ!」

突然の別れを遠回しに告られ、2人は酷く落ち込む。
しかしなまえには何を言っているのか、なぜこんな事になっているかさっぱり分からずただただ首を傾げた。

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みなみ様へ
この度はリクエストありがとうございました。
こういったスピンオフ的なものを書くのは楽しくて、ついつい長くなってしまいました。
まだまだ未熟な文筆ですが、少しでもご満足頂けるよう、これからも更新等全力を尽くして参りたいと思います。
再度申し上げますが、この度はありがとうございました!
素敵なコメントも頂き大変励みになりました。
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