充電
今日も大変だった。くたくたの仕事帰り、マンションのドアを開ければ玄関に私のではない靴があった。
え、来るなんて聞いてないよ、片付けてないし!
急いで奥に向かうと今朝出たときとは明らかに様子の違う部屋。
案の定。部屋の奥に向かえば私のベッドで寝ている、恋人。
そっと近付いて柔らかな前髪に指を通してみる。
また少し伸びた。リョーマは髪が伸びるのが早い気がする。
「…名前……?」
「おはよ。」
「ん。」
人の家来て寝ちゃうくらい疲れてるのに、それでも私に会いに来てくれたことが泣きたいくらいに嬉しい。
ついこないだ深夜の中継で見たテレビの中のサムライはあんなに不敵な表情をしていたのに、目の前にいる彼は眠そうに目をこすっている。
「来るって言ってくれればちゃんと綺麗にしといたのに。」
「別にいいよ。でも連絡は入れてたけどね。」
「うそ。」
鞄の中に入れっぱなしだった携帯を開けば確かに2時間前に入ってる着信と数件のメッセージ。
『飛行機降りた』『向かう』『着いた』『部屋汚い』と随分シンプルな文章。
「ほんとだ、ごめん。」
「そういうとこあるよね名前は。」
「うーん。全然気付かなかった。」
おかえりなさい ―――送信。
枕元に放ってあったリョーマの携帯の画面に通知が届いた、
リョーマはクスリと笑うと、私の両手を引いてベッドに上げた。
「目の前にいるんだから口で言えば?」
なんだか、こんな何気ないふたりの時間が久しぶりな気がする。
リョーマの胸に額を当てて深呼吸。いい香り。上に視線をやれば、リョーマは大きなあくびをしていた。
「まだ眠たい?」
「10分だけ…」
「うん、おやすみ」
閉じた瞼にキスをすると、リョーマはたちまち寝息を上げた。
10分なんて言わず、いいよ好きなだけ眠ろう。
リョーマの腕に抱かれて私も、うとうと、ずっと、このまま。
忙しい毎日のその隙間に、こんな時間がほんの少しでいい、少しでもあるのなら。
私、寂しいなんて言わない。
会えない毎日も頑張れるよ。
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