内出血



別に、付き合ってるわけではない。
なのに時々こうして触れ合って、言葉足らずなリョーマは尚のこと何を考えているのか分からない。これは愛でもなければ恋でもない。そう言い聞かせて放課後の図書館で息を殺した。

今日は図書委員の当番日で、返却済の本を棚に戻していたら同じく図書委員のリョーマがいつの間にか後ろに立っていた。今日はリョーマのクラスは当番じゃないのに、なんて。彼を呼んだのは私だ。

「名前。」

両腕を捕まえられて私の首筋をリョーマの柔らかな前髪がくすぐる。身をよじればセーラー服の襟を捲られて、耳の後ろから鎖骨まで唇が滑っていく。鎖骨の下のあたりに到達するとジュ、と水の音が鳴った。

「消える前に俺んとこ来て」その言葉を律儀に守って、私は胸の赤いのが薄くなってきた頃にリョーマに連絡をするのだった。

「消させないから。」

リョーマは満足そうに胸元の跡を指でなぞっててそう言った。

「だめって言っても付けるんでしょ。」
「わかってんじゃん。」

どうしてなんて聞かない。
リョーマが私を所有したい理由も、私がリョーマに依存する理由も、なんとなく分かってるから聞かない。


それでも今はそれで良いと思う。強がりで弱虫な私たちも独占欲に溺れているなら二人きりだから。



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