不釣り合い


(2025/9/17までサイト内拍手にお礼用として設置していたお話です。)




予鈴のチャイムが遠くで聞こえる。風が前髪を揺らして気持ちがいいはずなのに心に霞がかかったように薄暗い。

「ほんと馬鹿だよね。」

リョーマが笑った。
飛行機雲が右から左に伸びていく。

「…だって、いないんだもん、いい人。仕方ないじゃん。」
「それで好きでもない奴と付き合うの?」
「そうだね。」
「なんで。」
「なんでだろう。」

ひろーい空に両手足を投げ出したらリョーマも真似してごろんと寝ころんだ。

青、青、青。

天気が良かったから、ここに来たかった。
視界には空、横からあなたの声がして、それだけでいい。

「ありがと、気が済んだ。」
「戻る?」
「うん。」

こんなに近くにいるのに。
リョーマは私が言えばお昼休みも私にくれる。立ち入り禁止の屋上にも連れてきてくれるし、例えば私が突然海に行きたいなんて言っても呆れながらも手を引いてくれるんだろう。リョーマは優しい人。

「…でも不釣り合い。」

「? なに?」
「なんでもない。」

きっとリョーマはずっと『ここ』にいない。
どっちにしたって。

本当に好きな人と一緒にいる、お付き合いをする。
それが幸せなのだとしたら私は一生幸せになれない。

「ねえ。別れたらいいじゃん。」
「…よく言うよ。」
「…なにが。」
「初恋の人とは結婚できないってよく言うじゃん、だからもういいの。」
「…ふーん。」

欲しがりたくない。知られたくない。
『越前リョーマ』のため、そのつもりだった、のに

「じゃあ俺、アンタと結婚できないんだ。」

「え…?」

不釣り合いという言い訳を積み重ねて大きな壁にした。
あなたを真っ直ぐに見ようともしない私のことリョーマは見放さなかったのに。
こんな私に懲りずに傍にいてくれたのに、


「俺にしときなよ。」


全てが煌めいた。
すごく強い風が吹いてあなたが笑ったから

ほら、こんなに簡単なこと。




≪前 | 次≫
←main