夕立


帰り道に突然雨が降って来た。

「ゲリラ豪雨か」と言おうとしたら隣の名前は「夕立だね」と言って鞄から折り畳み傘を取り出す。小さな傘に二人で肩を詰め合って歩くもあまりに強い雨足にまるで傘の意味がない。近くの公園に屋根のあるベンチを見つけたので二人で座る。

「明日コートだめかもね。」
「意外と乾くんじゃない、最近朝も暑いし。」

なんて、なんでもない会話をするもあまりの土砂降りに声がかき消される。俺も名前も声が大きい方ではないので、互いに何度も聞き返す。焦ったくて今度は名前の耳元に口を寄せて話しかけた。

「全然止まないね。」

すると名前は驚いてこちらを見る。真っ赤な顔をして。

「何?」
「…近い。」
「え?」

名前の声が聞き取れない。再び顔を寄せると肩をグッと押される。だから何?視線を上げれば名前と目が合う。あ、近い。

「…キスしていい?」
「…?何?」

焦ったい。まあいいか。
辺りが暗くなってきて街灯にあかりがつき始める。雨も全然止まない。無防備なその表情に、そっと唇を重ねてみた。

「…」

何を言ったのか、名前の声は全然聞こえない。でも目を逸らさない。付き合い始めて一週間、初めてキスをした。人通りのない公園。屋根に滴る大粒の雨。まだ止まなくていい。



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