おいしい食事
パリーンと砕け散った、
緑色の結晶石。
真っ白なベッドにフローリングへ。
沢山沢山、結晶は飛び散った。
三日三晩前の話だ。
(手に刺さったら、きっと痛いだろうな)
狭い視界にすら映るそれを見て、
そんな事をぼんやり考えた。
そしてふと、目にとまる。
まぁるい結晶。
痛くなさそうな、凸凹の緑。
もっと近くで見たくて脚を進める。
よくみるとその結晶は丸くて小さい。
他のものよりもはるかに。
ころころと手で転がしてみる。
面が蛍光に反射してキラキラしていた。
菜や草、いつか食べた飴と同じ
ーーおいしそうな、緑色。
思い出すだけでお腹が空いた。
そういえばろくなご飯を
最近食べていなかったから。
ーー飲み込めるのなら……
食べれるものなら食べちゃおう。
どうせ食べたって怒られないだろう。
(……いただきます)
舌を伸ばし、
弄んでいた結晶を舐める。
ーーしょっぱくて甘い味が口の中を満たして。
味がする事に喜びつつ、
今度はそれを口に含んで、そっと噛んだ。
硬いと思っていたが、意外とそうではなく、
いとも簡単に結晶は口の中で粉々になった。
これは食べれるものだと
頭が認識すると、
次の結晶へと自然に手を伸ばしていて
そしてまた口に含んで飲み込む。
空き腹にはとてもご馳走で。
しかも自分がよく
舐めていた主の腕の味がするので、
ますます食べたい欲が駆け出す。
頬張り、噛み砕き、飲み込み。
ベッドをよじ登り、角の結晶ですら
頬張り、噛み砕き、飲み込み。
本当に幸せな気分になれて、
思わずワォーンと鳴き声を上げる。
主が砕けた緑の結晶が
こんなにおいしいのなら、
同じ味のした腕の肉は
もっと美味かったのだろうなと
ほんの少し寂しい気持ちになった。
ーーパリーンと砕け散った、
緑色の結晶石。
それは奇病を患った飼い主の死骸だ。
真っ白なベッドにフローリングへ。
沢山沢山、結晶は飛び散った。
三日三晩前の話だ。
飼い犬は、その死骸を食べましたとさ。
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